境界保持力とは、人との距離を健全に保つ力
人との距離感を取るのが難しいと感じることはありませんか?
相手に合わせすぎて疲れてしまう一方で、その敏感さが人との信頼関係を築く力にもなります。
境界保持力とは、自分と他者の境界を健全に保ちつつ、適切な距離感で関わる力です。
Emotional Compassでは、この特性を「社会的認識」の力のひとつとして位置づけています。
リーダーにとっても、この力はチームメンバーの多様性を尊重し、安心感を生み出すために欠かせません。
パーソナルスペースへの感受性
心理学者エドワード・ホール(1966)は、人は無意識に「パーソナルスペース」を感じ取り、距離を調整すると述べました。境界保持力が低い人は、このスペースに敏感で、相手の感情や雰囲気を素早く察知できます。
この感受性は、人間関係の潤滑油となり、共感や協力を引き出す力にもなります。
自分を守る線引き
ただし、境界を保てないと自分をすり減らしてしまいます。組織心理学の研究では「境界管理(boundary management)」の実践が、健康やワークライフバランスの維持に直結すると示されています(Ashforth et al., 2000)。
つまり、相手に寄り添う力と、自分を守る境界の線引きは両立させる必要があります。境界保持力を意識的に育てることで、人間関係はより健全になります。
実践のためのレシピ
- 1日の終わりに「今日、自分が無理をした場面」を振り返って書き出す
- 断りにくいときは「いま余裕があれば手伝える」と条件を添えて返す
- 週に一度は「誰にも邪魔されない自分だけの時間」を確保する
信頼を育むリーダーへ
境界保持力が低い人は、相手に寄り添えるからこそ信頼を得やすい特性を持っています。
ただし、自分を守る境界を意識的に整えることが、その信頼を持続させる鍵になります。境界を保つ姿勢は、メンバーにとって安心して関わる土台にもなります。
「信頼とは、自分を尊重しつつ相手を尊重するときに生まれる」
― スティーブン・R・コヴィー(世界的ベストセラー『7つの習慣』著者、リーダーシップ研究者)
コヴィーの言葉が示すように、境界を守ることと相手を尊重することは矛盾しません。むしろ両立したときにこそ、揺るぎない信頼関係が築かれるのです。
あなた自身は?
ここまで見てきたように、境界保持力は低さの中にも強みを秘めています。
あなた自身は、相手に寄り添うことと自分を守ること、どちらに偏りやすいでしょうか?
あなた自身の特性を確かめてみませんか?
Emotional Compass は、経営情報学博士である最上雄太が総合監修した EQリーダーシップ®️ を測定・育成することを目指すアセスメントです。
24特性3レベルの視点から、あなたの「境界保持力」を客観的に振り返ることができます。
参考・出典
- Hall, E. T. (1966). The Hidden Dimension. Anchor Books.
- Ashforth, B. E., Kreiner, G. E., & Fugate, M. (2000). All in a day’s work: Boundaries and micro role transitions. Academy of Management Review, 25(3), 472–491.
- スティーブン・R・コヴィー(1989)『7つの習慣』キングベアー出版
- 最上雄太(2022)『シェアド・リーダーシップ入門』(国際文献社)