気分に左右されるとき|ムード調整力で感情を整える

執筆:最上 雄太

感情の波を抱えながらも、自分らしく働くために


ムード調整力とは

「気分に引きずられてしまった」と感じたことはありませんか。ちょっとした不安や苛立ちが行動や人間関係に影響してしまう。逆に、気分が乗らないと集中が続かない。
ムード調整力とは、感情や気分の変化を自覚し、必要に応じてコントロールする力です。Emotional Compassでは「関係管理(RM)」の因子に属し、安定した行動や健全な対人関係を支える基盤になります。リーダーにとっても、自分の気分に振り回されずに場を安定させることは、チームの信頼感を守るうえで不可欠です。


研究が示す「雰囲気の力」

心理学者バルサイド(Barsade, 2002)は、感情が職場で「感染」する現象を明らかにしました。リーダーの表情やトーンがチーム全体の雰囲気に広がり、パフォーマンスや協力関係に直接影響を与えるのです。

また、エドモンドソン(Edmondson, 1999)は、心理的安全性の研究において、リーダーの落ち着いた姿勢がメンバーの安心感を支えることを強調しました。感情的に不安定なリーダーのもとでは、挑戦や発言が抑制される傾向があると報告しています。

さらに、最上雄太(2022)は『人を幸せにする経営』において、リーダーが自身の感情を調整し「場の空気をデザインする」ことが、信頼と成果の循環を生むと強調しています。感情を抑えるのではなく、場にふさわしい形に整える姿勢こそがリーダーシップの質を左右します。


実践のためのレシピ

ムード調整力が低めの人でも、次のような工夫で一歩を踏み出せます。

  1. 気分を言葉にする
    「今日は少し疲れている」と自覚して言葉にするだけで、感情に巻き込まれにくくなります。
  2. 呼吸を整える
    深呼吸を3回繰り返すだけで、自律神経が落ち着き、感情の波が和らぎます。
  3. ポジティブなアンカーを持つ
    写真や音楽など、自分の気分を切り替えるきっかけを用意しておく。
  4. 場の雰囲気を意識する
    自分の気分だけでなく「チーム全体の空気」に目を向け、落ち着きを示す行動を選ぶ。

信頼を育むリーダーへ

リーダーが自分の気分に振り回されずに場を整える姿勢は、それ自体がメッセージになります。苛立ちを抑え、冷静に対応するだけで、メンバーは「安心して働ける」と感じます。ムード調整力は、単なる感情コントロールではなく、信頼を築くための環境づくりです。リーダーの一呼吸が、チーム全体の空気を変えるのです。


あなた自身は?

あなたは普段、気分の波をどのように受け止めていますか?
感情が行動や判断に影響した経験はありますか?
それを少し調整することで、どんな変化が起こりそうでしょうか?


あなた自身の特性を確かめてみませんか?

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参考・出典

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