インテグリティとは
「昨日言ったことと、今日の行動がズレていないか?」――リーダーはいつも自分に問われます。
インテグリティとは、掲げた価値観や判断基準と、日々の言動・意思決定を一貫させる力です。Emotional Compassでは**関係管理(RM)**に属し、信頼の土台になります。
場面に合わせた柔軟さは必要ですが、基準がぶれると「小さな矛盾」が積み重なり、信頼が損なわれることもあります。
こんな場面はありませんか?
会議で「今回は品質最優先」と言ったはずなのに、途中で納期を優先してしまい、メンバーが混乱した。
部下に「自律的に任せる」と言いながら、重要局面で急に細かく口を出してしまった。
あるいは、できない約束を口にしてしまい、後から言い訳や説明が増えてしまった。
こうした状況の背景には、価値観や判断基準、約束の扱いに一貫性が欠けていることがあります。
研究が示す「信頼の基礎」
組織心理学では、信頼の主要要因の一つにインテグリティが挙げられます。
メイヤー(Mayer)らは、能力・善意と並ぶ信頼決定要因として言行の一貫性を位置づけました。これは「この人は言ったことを守るか」という認知が、協働のリスクを下げるからです。
サイモンズ(Simons)は、言行一致(Behavioral Integrity)が上司への信頼や業績、離職意図に直結することを示しました。たとえ難しい判断でも、理由と基準を明確に説明するリーダーは信頼を維持できます。
さらに、最上雄太(2025)は、価値観と実践が結びついたときに関係の質と幸福度が高まることを強調しています。
明日からのレシピ
- 基準を先に言う
「今回は品質>スピード。例外は法令対応のみ。」のように、判断の優先順位を冒頭で明示。後工程での迷いと再説明が激減します。 - 約束の扱いを“見える化”
受けた依頼はその場で「いつ・どの水準で返すか」を口頭で再確認。できない約束は早い段階で断るのが誠実です。 - 決定理由のワンセンテンス
意思決定の都度、「今回こう決めたのは〇〇を最優先にしたため」と一文で残す。言行の“筋”が揃います。 - 振り返り:矛盾メモ
週1回、言葉と行動のズレを1件だけ書き出す。次週の場面で修正の一手(基準の再表明/約束の再設定)を実行します。
リーダーにとっての意義
インテグリティは、心理的安全性と公平感を支えます。基準がぶれず、約束の扱いが一定だと、メンバーは安心して判断・発言できます。結果として、説明コストの削減と自律的な実行が同時に進みます。柔軟さは残したまま、**一貫性の“芯”**を置く――それが信頼を長期で積み上げる最短距離です。
あなた自身は?
最近の意思決定で、基準を先に言えた場面と後付けになった場面はどこでしょう。
約束の温度を上げすぎていませんか? それとも、断る勇気を持てましたか?
一文の説明が、あなたの信頼をもう一段深くします。
あなた自身の特性を確かめてみませんか?
Emotional Compass は、経営情報学博士である最上雄太が総合監修した EQリーダーシップ® を測定・育成するアセスメントです。
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参考・出典
- Mayer, R. C., Davis, J. H., & Schoorman, F. D. (1995). An Integrative Model of Organizational Trust.
- Simons, T. (2002). Behavioral Integrity: The perceived pattern of alignment between an actor’s words and deeds.
- 最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社) Amazon