情動調整力とは、感情をコントロールする力
感情を抑えることが難しいと感じる人もいます。怒りや不安がすぐに表に出てしまうこともあるでしょう。
しかしその率直さは、周囲に本音を伝える力にもなります。
情動調整力とは、感情の高まりを適切にコントロールし、状況に応じて表現を整える力です。
Emotional Compassでは、この特性を「自己管理」の力のひとつとして位置づけています。
リーダーにとって、感情をどう扱うかはチーム全体の雰囲気を左右する重要な要素です。
創造につなげる力
心理学者ジェームズ・グロス(1998)は「情動調整理論」を提唱し、人は感情を理解し、捉え直すことで自らの反応を変えられると示しました。たとえば怒りをそのまま爆発させるのではなく、「なぜ自分は怒っているのか」を解釈し直すことで、行動を選び直すことができます。感情の強さはエネルギーの源泉ですが、それを整理できなければ衝動的な行動につながります。つまり情動調整力は、豊かな感情を「破壊」ではなく「創造」につなげる回路なのです。
組織の安心と冷静さ
ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン(1999)は、心理的安全性の高い組織ではメンバーが率直に意見を出せると報告しました。ここには「感情を冷静に扱えるリーダーの存在」が大きく影響しています。怒りや不安に振り回されず、落ち着いて対応できる姿勢は、周囲に安心感を与えます。逆にリーダーが感情的すぎると、チームは委縮し、意見が出なくなるのです。情動調整力は、組織の安全な対話を支える隠れた要素といえるでしょう。
実践のためのレシピ
- マインドフルネス研究の第一人者ジョン・カバットジンが提案する呼吸法を取り入れる。深い呼吸に注意を向けるだけで、心が静まり冷静さを取り戻せます。
- 「今は一度落ち着こう」とセルフトークを行い、感情に距離を置く。
- 強い感情を抱いた場面を紙に書き出し、事実と感情を分けて眺め直す。
信頼を築くリーダーへ
リーダーシップとは感情を隠すことではなく、適切に扱う力です。情動調整力を育てることは、率直さと冷静さの両立を可能にします。ネルソン・マンデラ(南アフリカ元大統領、アパルトヘイト廃止を導いたリーダー)は「勇気とは恐れを感じないことではなく、恐れを克服することだ」と語りました。怒りや恐れに直面しても落ち着きを保つ姿勢は、周囲に安心を与え、信頼の礎となります。
あなた自身は?
あなたは強い感情に直面したとき、どのように自分を落ち着けていますか?
その方法は、周囲の信頼を高めていますか? それとも不安を与えていますか?
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参考・出典
- Gross, J. J. (1998). The emerging field of emotion regulation: An integrative review. Review of General Psychology, 2(3), 271–299.
- Edmondson, A. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383.
- John Kabat-Zinn(1990)『マインドフルネスストレス低減法』北大路書房
- 最上雄太(2022)『シェアド・リーダーシップ入門』(国際文献社)