なぜリーダーは3年目に飛躍するのか|信頼を育てる2年の関係構築|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

リーダーに就任すると、「早く結果を出さなければ」という焦りがつきまといます。
とくに“90日で成果を示すべき”という神話は、多くの人を追い込んできました。しかし、この焦りは本当に正しいのでしょうか。

最新のHarvard Business Review(HBR)でクラウディウス A. ヒルデブランドらは、「信頼は築くのに丸2年かかる」 と述べています(リンク:https://dhbr.diamond.jp/articles/-/10839?utm_source=premium_dhbr&utm_medium=email&utm_campaign=20251204)。
スピードよりも、関係の質こそがリーダーの成果を左右するという視点です。

本稿では、HBRの知見とINNERSHIFTの思想線を重ねながら、「なぜ、3年目に飛躍が起きるのか」を考えます。


「90日で結果」は、なぜリーダーを焦らせるのか

就任直後は、期待が大きく、周囲の視線も集まります。
その状況で生まれるのが、いわば“期待の演出”です。短期間で変化を示し、スピード感をもって動くことが求められる。しかし、ここで多くのリーダーが重要な点を見落とします。

スピードは、信頼と同義ではない。

HBR論文でも触れられているように、就任初期には周囲が“期待による好意的解釈”をしてくれます。しかしそれは、感情的な安心が担保された状態ではありません。
表面的な支持と、深い信頼はまったく違う層にあります。

焦りが強いほど、関係の基盤が育たず、逆に信頼の構築を遠ざけてしまう。
“急ぐべき領域”と“育てるべき領域”を見誤ると、リーダーシップは不安定になります。

あなたが感じている焦りは、本当に必要なものだろうか。


信頼には“丸2年”かかる──HBRが示した時間軸

HBRの調査では、S&P500 CEO 約1,400名のデータが分析され、次の点が明確になりました。

「リーダーが周囲から最も強く信頼されるのは、就任後2年が経過した頃である。」

その2年間で積み上げられる行動は、主に次の4つです。

  1. 聞く
     相手を理解する姿勢そのものが信頼の入口になる。
  2. 約束を守る
     小さな約束の積み重ねが、関係の“信用残高”を増やしていく。
  3. 背景を説明する
     意思決定の根拠を共有することで、納得の土台ができる。
  4. 功績を分配する
     成果をチームに還元する行動は、関係の温度を大きく上げる。

こうして2年間で蓄積された“見えない資本”が、3年目の飛躍につながる。
飛躍は偶然ではなく、関係の土台づくりの結果であるということです。

信頼の時間軸を変えると、リーダーの行動計画も変わっていくのではないか。


EQリーダーシップ®が問うのは、関係の質をどう育てるか

INNERSHIFTの思想線では、リーダーシップとは 感情 → 行動 → 関係 の循環だと考えます。

リーダー自身がどんな感情を抱き、どんな行動で応え、どんな関係をつくるのか。
その一つひとつが、信頼の質を決めていきます。

HBRの示す「2年の関係構築」は、EQリーダーシップ®の視点と重なります。
信頼とは、正しさの話ではなく “相手がどう感じるか” を含んだ体験の積み重ねだからです。

あなたが今日つくる1つの行動が、2年後どんな関係を育てているだろうか。


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