場の空気を整える
会議が始まる直前、少し張りつめた空気が流れている。
そんなとき、誰かが穏やかな声で今日体験した話をする──
それだけで場が和らぎ、呼吸がそろい始める瞬間があります。
「ムード調整」とは、場の空気を敏感に察し、必要に応じてその雰囲気を整える力です。
それは、単なる気配りではなく、人と場の感情を感じ取り、関係の温度を整えるリーダーシップとして描きます。
Emotional Compassでは、本特性は関係管理(RM)因子に属します。
本稿では、“場の感情をデザインする”という視点から、心理的安全性を支えるリーダーシップを探ります。
🌬 感情文化を整えるというリーダーシップ
バーサードとオニール(Barsade & O’Neill, 2016)は、ハーバード・ビジネス・レビュー論文 “Manage Your Emotional Culture” において、職場の感情が組織文化の中核を形づくると述べています。
彼女たちは、「強いチームをつくる鍵は、リーダーが日常的にどんな感情を表現し、どんな空気を広げているか」にあると指摘しています。
感情文化とは、メンバーが職場で“どんな感情を感じ、表してよいのか”という無意識の合意です。
喜びや思いやりが尊重される場では、自然と協働や信頼が育ち、逆に不安や怒りが蔓延すれば、関係はぎこちなく閉ざされていく。
感情文化を整えることは、チームの雰囲気を保つだけでなく、人が安心して力を発揮できる“関係の土台”をつくる行為でもあります。
そこには、空気をただ感じ取るだけでなく、意図的に整えるリーダーの存在が欠かせません。
このように考えると、「ムード調整」とは単なる気配りではなく、関係の質をデザインするリーダーシップであることが見えてきます。
🌤 静かな調整が、関係を醸成させる
最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社)では、
「沈黙や微笑といった“静かな調整”が、関係をあたためる」と述べています。
リーダーは場を支配するのではなく、穏やかな呼吸で空気を整える存在です。
たとえば、緊張が走る会議で一度深呼吸し、落ち着いた声で話す──
それだけで空気は柔らかくなり、人の心が動き出す。
ムード調整とは、言葉よりも先に伝わるリーダーの姿勢です。
感情のトーンを意識的に整えることが、心理的安全性を支える最も静かなリーダーシップのかたちなのです。
🌱 いま、場のムードを整えているのは誰ですか?
チームの雰囲気は、誰か一人の感情から静かに変わります。
その“ひと呼吸”が、関係の安全と信頼を支えているのです。
あなたが今日、整えるべき空気はどんな温度でしょうか。
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📚 参考文献
Barsade, S. G., & O’Neill, O. A.(2016)“Manage Your Emotional Culture.” Harvard Business Review.
https://hbr.org/2016/01/manage-your-emotional-culture
最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社) https://amzn.to/48rqTqt