傾聴力とは
リーダーにとって「耳を傾ける姿勢」は、チームに安心感をもたらす大切な要素です。 しかし現実には、話を聞くよりも自分の意見を優先してしまう場面も少なくありません。
Emotional Compassでは、この特性を「社会的認識」(RM)の力のひとつとして位置づけています。
リーダーにとって耳を傾ける姿勢は、チームに安心感をもたらす大切な要素ですが、現実には自分の意見を優先してしまう場面も少なくありません。
傾聴の意義を裏付ける研究
臨床心理学者カール・ロジャーズ(1957)は、カウンセリングにおいて「共感的理解」を重視しました。相手の気持ちを理解しようと耳を傾けることが、信頼関係を築く基盤になると指摘しています。彼の言葉を借りれば――
「耳を傾けることは、相手に『あなたは大切だ』と伝える最も静かな方法である」
――カール・ロジャーズ(臨床心理学者、『来談者中心療法』の提唱者)
また、リスニング研究の第一人者ブラウネル(2012)は、傾聴を「受動的ではなく、能動的な行為」と定義しました。単に黙って聞くのではなく、質問や相づちを通じて理解を深める姿勢こそが傾聴力の本質なのです。
さらに、組織行動学の研究では、心理的安全性(Edmondson, 1999)が高いチームは、メンバー同士が安心して発言できることが示されています。その背景には、リーダーや仲間が「真剣に耳を傾けてくれる」という信頼感があります。ゴールマン(1995)も、EQ(感情知能)の主要要素のひとつとして共感を挙げ、対人関係に不可欠であると強調しました。
実践のためのレシピ
心理学の知見を踏まえ、明日から取り入れられる行動を4つ紹介します。
- 沈黙を恐れない
相手の言葉の直後にすぐ返答せず、数秒間の間を置くことで、相手がさらに考えを深める余地を与えます。 - 確認の質問をする
「つまり、こういうことですか?」と要約して返すと、誤解を防ぎ、相手に理解されている安心感を与えられます。 - 会議での小さなサインに気づく
声が小さい発言や、言葉に出せない表情を拾い上げて「もう少し詳しく聞かせてもらえますか」と促す。これだけで場の空気は変わります。 - 評価せずに受け止める姿勢
相手の言葉を「良し悪し」で判断せず、一度そのまま受け止めること。これにより相手は安心して話し続けられます。
信頼を育むリーダーへ
リーダーにとって、傾聴は単なる技術ではなく「信頼を積み重ねる習慣」です。部下が発言したときにうなずきやメモを取るだけでも、相手は「自分の意見が尊重されている」と感じます。逆に、話を遮ったりスマホを見たりすれば、信頼は一瞬で崩れます。
傾聴を意識することで、メンバーは安心して意見を表明でき、チーム全体の心理的安全性が高まるのです。
あなた自身は?
あなたは普段、人の話を聞くときにどんな姿勢を取っていますか?
相手の言葉を最後まで聞き切れていますか?
その態度は、周囲に安心感を与えていますか? それとも緊張感を生んでいますか?
あなた自身の特性を確かめてみませんか?
Emotional Compass は、経営情報学博士である最上雄太が総合監修した EQリーダーシップ® を測定・育成するアセスメントです。
全24特性×3レベルの診断を通じて、あなたの「感情を活かす力」を客観的に把握できます。
参考・出典
- ロジャーズ, C. (1957). The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change.
- Brownell, J. (2012). Listening: Attitudes, Principles, and Skills.
- エドモンドソン, A. (1999). Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams.
- ゴールマン, D. (1995). 『EQ―こころの知能指数』(Bantam Books).