私たちは、うまくいかなかった出来事を「終わり」と感じてしまうことがあります。けれど、失敗は人生の句読点ではなく、新しい章の始まりです。あの痛みがあったからこそ見えた景色、そこに触れたとき、人は少しずつ変わり始めます。
「失敗受容力」とは、うまくいかなかった経験を“自分をつくり直す力”として受け入れる知性です。失敗を隠すのではなく、その痛みの中に学びを見いだす。それが、リーダーとしての成熟を支える礎になります。
Emotional Compassでは、本特性は自己管理(SM)因子に属します。成長とは、欠けを消すことではなく、欠けを抱えたまま進む勇気から生まれます。
失敗は、立ち止まるための時間
失敗は誰にとっても痛みを伴います。すぐに前を向こうとしても、心が追いつかないときがあります。けれど、その“立ち止まる時間”こそが、再生の始まりです。人は苦しみを通して、自分の限界と優しさの両方を知るのです。
自分を責める気持ちが静まっていくとき、出来事の意味が少しずつ見えてきます。「なぜ起きたのか」ではなく、「そこから何を学べたのか」。それを問えるようになったとき、失敗は過去ではなく、現在の自分を支える土台に変わります。
逆境が人を成長させるという心理学
心理学には「逆境成長(Posttraumatic Growth)」という考え方があります。心理学者テデスキとカルフーン(Tedeschi & Calhoun, 2004)は、困難や喪失の経験が、人をより成熟した理解・関係・価値観へと導くと述べました。
「痛みの中に、成長の種がある。」
失敗や喪失を経た人ほど、他者の痛みに共感し、より深い思考を育むことができる。それは、強さではなく、しなやかさとしての強さです。
「もう一度立ち上がる力」は、生まれ持った才能ではなく、痛みを抱えながら生き抜こうとする知性の表れなのです。
「失敗を語る」ことが信頼を育てる
最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社)では、こう語られています。
「失敗を隠さず語る組織こそが、最も学び続ける。」
リーダーが自分の失敗を語ることは、弱さの告白ではありません。それは、挑戦を続ける文化を支えるリーダーシップの表現です。
「失敗してもいい」と思える環境は、恐れではなく信頼を生みます。
そして信頼があるからこそ、人は次の挑戦へと踏み出せるのです。
リーダーの役割は、失敗を減らすことではなく、失敗からの学びを共有することです。個人の痛みを組織の知恵へと変換し、成長の循環をつくる。そこに、持続するチームの力が宿ります。
傷の中にある希望
失敗受容力とは、過去の痛みを否定せず、そこにある意味を見つめ直す力です。傷を抱えながらも前を向く姿に、人は勇気を見出します。完璧ではない自分を受け入れることで、他者にも優しくなれる。それこそが、リーダーとしての成熟です。
失敗を通してしか見えない景色がある。それは、成功だけではたどり着けない場所。
あなたの中で、どんな“失敗”があなたを育てていますか?
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📚 参考文献
- Tedeschi, R. G. & Calhoun, L. G.(2004)“Posttraumatic Growth: Conceptual Foundations and Empirical Evidence.” Psychological Inquiry, 15(1), 1–18.
- 最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社)
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