挑戦共感性──誰かの挑戦が、自分を動かす力になる

執筆:最上 雄太

誰かが新しい挑戦を始める姿を見たとき、心が少し熱くなる瞬間があります。
その人の情熱や勇気に触れたとき、自分の中でも何かが動き出す。
「自分もやってみたい」という小さな衝動が、静かに灯る。

それが、「挑戦共感性」のはじまりです。
他者の挑戦をただ眺めるのではなく、そのエネルギーに共鳴して自分も変化していく力。
Emotional Compassでは、本特性は自己管理(SM)因子に属します。
リーダーとは、他者の挑戦を通して場の可能性を広げる存在です。


他者の挑戦が、内なるスイッチを押す

人は、他者の挑戦に心を動かされるとき、自分自身の未来を重ねています。
それは羨望ではなく、「自分もその方向へ進みたい」という共鳴。
共感とは、相手の気持ちを理解することではなく、相手の変化に自分も動かされることです。

たとえば、仲間が新しい事業を立ち上げる姿を見たとき。
その覚悟や不安を想像しながら、自分の中にも勇気が湧いてくる。
他者の行動が、自分の可能性を呼び覚ます──それが「挑戦共感性」です。


共鳴が人を成長させる──Boyatzisの理論から

心理学者 ボヤツィス&アクリヴー(Boyatzis & Akrivou, 2006) は、
「共鳴的関係(Resonant Relationships)」という概念でこう述べています。

共感的な関係は、人の内面に変化をもたらし、
理想の自己(Ideal Self)を思い出させる力を持つ。

共鳴とは、他者の感情や行動に触発され、
自分の“理想の自己”を思い出すプロセスです。
人は孤立して成長するのではなく、
他者の挑戦を通して「変わりたい自分」に気づいていく。

ボヤツィスらは、持続的な変化を生むのは「義務感」ではなく、
理想の自己と他者の理想が共鳴するときだと述べています。
つまり、共感は「理解」ではなく「変化の触媒」なのです。
他者の情熱に触れたとき、人は自分の中の希望や可能性を再び感じ取り、
それが新しい行動へのエネルギーとなっていきます。


共鳴がつなぐチーム──『シェアド・リーダーシップ入門』より

最上雄太(2023)『シェアド・リーダーシップ入門』(国際文献社)では、
リーダーシップを「人と人のあいだに生まれる現象」として描いています。

「リーダーとは、他者の意志や希望に共鳴し、それを場に循環させる存在である。」

ここで語られるのは、共感の延長にある“共鳴の共有”。
誰か一人の挑戦が、チーム全体の挑戦を引き出す。
その連鎖が起こるとき、リーダーシップは個人の資質ではなく、関係の力として立ち上がります。

他者の挑戦を自分ごととして受け止め、
自らの行動へと変換していく力──それが「挑戦共感性」の本質です。


あなたに問いかけたいこと

あなたは、いま誰の挑戦に心を動かされていますか?
その共鳴こそが、次の行動を生むきっかけになります。
他者の挑戦は、あなた自身の未来の種かもしれません。


参考文献


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