正論がチームの空気を殺すとき──年始ミーティングで起きる“目標の課題化”|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

こんな記事があります

こんな記事があります。
ダイヤモンドオンラインの2026年1月5日の記事
**「新年最初の『チームミーティング』で嫌われるリーダーの“発言”・ワースト1」**では、年始の目標設定という前向きな場面で、リーダーのある一言がチームの空気を冷やしてしまう瞬間が描かれていました。

たとえば、メンバーが
「今年は新しい分野に挑戦してみたい」
「社外の人と関わる経験を増やしたい」
と語ったときに投げかけられる、次の問いです。

「それは、どうやって会社の成果につながるの?」

言っていることは正論です。
組織として成果を出す以上、無関係な目標はありえません。

それでも、この問いが発せられた瞬間、場の空気が微妙に変わることを、多くのリーダーは経験しているのではないでしょうか。


何が起きているのか──「目標」が「課題」に変わる瞬間

年始の目標宣言で語られる言葉の多くは、まだ輪郭のはっきりしないものです。

それらは、完成された計画というよりも、「こうありたい」という方向感に近いものです。

ところが、その言葉に対して即座に成果や合理性を問うと、目標は別のものに変わります。

本人の中で芽生えかけていた目標は、「達成すべき課題」へと早々に確定されてしまいます。
この変換が起きた瞬間、目標は自分のものという感覚を失い、管理される対象になっていきます。


正論が悪いのではない──問題は「タイミング」

ここで誤解してはいけないのは、成果を問うこと自体が間違いなのではない、という点です。
むしろ、リーダーが成果に責任を持つのは当然のことです。

問題は、その問いがいつ投げかけられているかにあります。

年始の目標宣言は、まだ目標が育ちきっていない段階です。
方向感はあっても、意味づけや成果への接続は、これから形づくられていく途中にあります。

この段階で即効性や有用性を求めると、目標は「育つ前に完成させられる」ことになります。

『チームプレーの天才』では、次のように述べられています。

体験で得た学びや気づきを、すぐに活かそう(または活かさせよう)と躍起にならない。
——『チームプレーの天才』

ここで語られているのは、甘さではありません。
体験や目標には、熟成の時間が必要だという認識です。


心理学から見る「目標の課題化」

この現象は、心理学の視点からも説明できます。

自己決定理論(Self-Determination Theory)では、人が主体的に動くためには
「自分で選んでいる」という感覚、すなわち自律性が重要だとされています。

年始のミーティングで起きているのは、次のような変化です。

このプロセスを経ると、本人が選んだという感覚は徐々に薄れていきます。
結果として、無難で説明しやすい目標だけが残り、挑戦や探索は避けられるようになります。

正論によって、メンバーの内発的な動機が静かに下がっていく。
それが「目標の課題化」がもたらす、見えにくい影響です。


リーダーの問いは、どう変えられるか

成果を問わないことが解決策ではありません。
重要なのは、問いの順番です。

たとえば、次のように問いを差し替えることはできます。

探索の余地を残したまま対話を重ねることで、目標は少しずつ輪郭を持ち始めます。
成果との接続は、その後でも、何度でも行うことができます。


終わりに

年始の目標設定は、計画を確定させる場であると同時に、可能性を開いたままにする場でもあります。

リーダーの一つの問いが、
目標を育てることもあれば、早々に閉じてしまうこともある。

その違いを生むのは、正しさではなく、
未完成なものを、未完成のまま扱えるかどうかなのかもしれません。


参考文献


引用元記事


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