人に伝えたつもりが、伝わらないとき|意図共有力を高めるポイント

執筆:最上 雄太

意図が抜け落ちると、協働はすれ違う


意図共有力とは

「会議で説明したのに、チームの動きが噛み合わない」――そんな経験はありませんか。
表面的な指示やタスクだけでは、相手は迷いながら動いてしまい、成果がバラつくことがあります。

意図共有力とは、「なぜそう考えたのか」「どうしてその選択をしたのか」といった背景を、相手に伝わるように説明する力です。誤解を防ぎ、関係を深める土台になります。
Emotional Compassでは「関係管理(RM)」に属する特性であり、チームの信頼を築き、同じ方向に進むための基盤です。


研究が示す「意図の力」

心理学者エイミー・エドモンドソン(1999)は、心理的安全性の研究において、背景や基準が明確に共有されるほどメンバーは安心して意見を出せると示しました。意図を開示することは、発言や挑戦が歓迎される空気をつくる第一歩になります。

また、ロックとレイサム(2002)が提唱したゴール設定理論では、具体的で挑戦的な目標が動機づけを高めることが確認されています。依頼に意図を添えることで、単なる作業が「意味のある挑戦」として受け止められるのです。

さらに、最上雄太(2022)『人を幸せにする経営』では、リーダーが自らの意図を丁寧に語ることが信頼関係の基盤となり、組織を前進させることが強調されています。意図の共有は、協働を支える実践的な手法として位置づけられています。


実践のためのレシピ

意図共有力が低めの人でも、次の工夫で日常に取り入れることができます。

  1. Why を添えて依頼する
    「来週の会議で意思決定できるようにしたいので、この資料を作ってください」と目的を明示する。
  2. 期待する成果像を一文で示す
    例:「議論の選択肢を3つに絞れる状態にしたい」。
  3. 判断基準や制約条件を伝える
    「今回はスピード優先で」「この予算内で」と一言添えると迷いが減る。
  4. 理解を確認する
    「どう理解した?」と聞き返し、その場で解釈のズレを修正する。

信頼を育むリーダーへ

リーダーが意図を共有することで、チームの安心感は大きく高まります。
「なぜそのタスクが必要なのか」を一言添えるだけで、メンバーは自分の役割を全体の流れに結びつけて理解できます。余計な修正も減り、チームは前向きに進みます。

意図共有は、単なる情報伝達ではありません。背景や理由を語る勇気が、信頼を築き、協働をスムーズにする鍵なのです。


あなた自身は?

あなたは普段、人に依頼するときに何を省きがちですか?
Why(理由)を飛ばしてしまうことはありませんか?
最近の会話を振り返り、「もう一文を足せばもっと伝わった」と思える場面を探してみてください。小さな工夫がチームの大きな前進につながります。


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参考・出典

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