答えを探してきたのに、なぜ問いは深くなっていくのか。|INNERSHIFT

著者:Yuta Mogami, Ph.D.

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「リーダーって何だ?」

この問いを初めて強く意識したのは、もう25年ほど前になります。

当時の私は、研究者ではありませんでした。

企業で働き、組織の中で仕事をし、人を動かし、時には自分自身も誰かに動かされながら、リーダーシップというものを日々経験していました。

けれど、分からなかった。

成果を出す人がリーダーなのか。

人を引っ張る人がリーダーなのか。

役職を持つ人がリーダーなのか。

それとも、もっと別の何かなのか。

「リーダーって何だ?」

その問いに、私は答えがほしかったのだと思います。

感情を知れば、リーダーシップが分かるのではないか

その後、私はMBAで学びました。

そこで関心を持ったのが、感情とリーダーシップの関係でした。

人は、理屈だけで動くわけではありません。

同じ言葉をかけられても、ある人には届き、別の人には届かない。

同じリーダーのもとでも、意欲を高める人もいれば、距離を置く人もいる。

そこには、感情がある。

自分の感情があり、相手の感情があり、人と人とのあいだで生まれる感情があります。

リーダーシップを考えるなら、そこを避けて通ることはできない。

私はそう考え、MBAでは感情とリーダーシップについて研究しました。

2005年のことです。

いま振り返れば、これも「リーダーって何だ?」という問いに答えようとした一つの試みだったのだと思います。

けれど、MBAを終えた私は、すぐに次の研究へ向かったわけではありません。

むしろ、

「こんな苦労はもう二度としたくない」

と思っていました。

研究者になる道を、そのときから一直線に歩き始めたわけではないのです。

それでも、問いは残った

仕事を続けながら、その後も私はリーダーシップについて考え続けました。

本を読み、実践し、人と話し、組織を見る。

すると、次第に気になることが変わっていきました。

「優れたリーダーとは、どんな人なのか」

という問いだけでは、目の前で起きていることを十分に説明できない。

一人の優れた人物が、周囲の人々を動かしているように見える場面もあります。

しかし実際の組織では、もっと複雑なことが起きています。

誰かが話し始める。

別の人が応える。

それまで黙っていた人が動き始める。

ある人の行動をきっかけに、別の人が役割を引き受ける。

リーダーシップは、本当に一人の人間の中にあるものなのだろうか。

それとも、人と人とのあいだで生まれるものなのだろうか。

問いの場所が、少しずつ「人」から「関係」へ移っていきました。

「誰がリーダーか」から、「どう生まれるのか」へ

やがて私は、Shared Leadershipを研究するようになりました。

Shared Leadershipでは、リーダーシップを一人の公式なリーダーだけに限定せず、チームの複数のメンバーによって担われるものとして捉えます。

私が知りたかったのは、その状態が「ある」ということだけではありませんでした。

どうやって、それが生まれるのか。

昨日まで一人のリーダーに頼っていた人たちが、なぜ自分たちで考え、働きかけ、互いに影響を与えるようになるのか。

その変化は、どのように起きるのか。

私は組織変革チームの中に入り、そこで起きることを追い続けました。

それが、2022年にまとめた博士論文、

『シェアド・リーダーシップが発生するメカニズムの質的研究―組織変革チーム「挑戦者の会」のエスノグラフィー』

につながりました。

博士号を取ったとき、長く持ち続けてきた問いに、ようやく答えが出た。

そう言えれば、話としてはきれいです。

でも、実際は違いました。

博士論文でも、問いは終わらなかった

博士論文では、Shared Leadershipが発生していくプロセスを追いました。

そこから私は、発生について一つの可能性を示唆できたと考えています。

ただし、それは「Shared Leadershipがどのように発生するかを完全に解明した」という意味ではありません。

むしろ、研究を終えた後に別の問題が見えてきました。

発生したことを明確に示したいのであれば、その前に「発生していない状態」が何なのかを、もっと確かに捉える必要があるのではないか。

ここで、問いが反転しました。

「リーダーシップは、どう生まれるのか」

だけではない。

「なぜ、生まれないのか」

発生を研究したからこそ、非発生が気になり始めたのです。

人が集まり、話している。それでも生まれない

現在、私が考えている問いは、さらに少し違います。

人々が集まっている。

会議もしている。

話もしている。

そして、自分たちの組織に問題があることも分かっている。

それなのに、なぜRelational Leadershipは発生しないことがあるのか。

英語にすると、現在のResearch Questionはこうなります。

Why does relational leadership fail to emerge even when organizational members meet, talk, and recognize shared problems?

ここで私が見ようとしているのは、単純に「会話が少ない組織」ではありません。

むしろ、人々は話している。

問題についても語っている。

それでも、人と人との関係そのものには何かが起きていない。

その観察を、私はいま、

「問題は語られるが、関係は語られない」

という言葉で捉えようとしています。

そして、その関係を考えるために、現在「Monologic Relationship」という視点を検討しています。

これはまだ、完成した理論でも、確立された研究成果でもありません。

いままさに形成している途中の研究です。

だから、答えはまだありません。

答えを探していたはずなのに

こうして振り返ると、不思議です。

25年ほど前、私が知りたかったのは、

「リーダーって何だ?」

ということでした。

それが、感情とリーダーシップへ向かい、

「リーダーシップは誰か一人の中にあるのか」

という問いになり、

Shared Leadershipを研究する中で、

「人と人との関係のなかで、リーダーシップはどう発生するのか」

へ変わった。

そしていまは、

「なぜ、同じように人が集まり、話し、問題を認識していても、リーダーシップが発生しないことがあるのか」

を考えています。

問いに答えようとして研究してきたはずなのに、答えが一つに定まるどころか、問いの方が変わってきました。

深くなった、と言った方が近いのかもしれません。

以前の私は、リーダーシップの「正体」を知りたかった。

いまの私は、リーダーシップが人と人とのあいだで生まれる、その瞬間と、生まれない関係の両方を見ようとしています。

私はいまも、25年前の問いの途中にいる

研究を続ければ、いつか答えにたどり着く。

以前は、どこかでそう考えていたのかもしれません。

けれど、いまは少し違います。

一つの問いを本気で追いかけると、その問いの奥に、それまで見えていなかった別の問いが現れる。

答えを得たと思った場所が、次の問いの入口になる。

MBAでも終わりませんでした。

博士論文でも終わりませんでした。

そして現在の研究でも、おそらくすべてが終わることはないでしょう。

それでも私は、リーダーシップを問い続けています。

なぜなのか。

たぶん、25年前に生まれた、

「リーダーって何だ?」

という問いが、まだ私の中で終わっていないからです。

答えを得るために研究してきたはずなのに、研究するほど問いは深くなった。

そして私はいまも、25年前の問いの途中にいます。

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グラフが示す高低は、リーダーとして感情特性をにいかに活用しているか(あなたらしさ)のバランスを示しています。あなたの能力の優劣を示すものではありません。

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