その決断はどこから来るのか|1.7万人データが示すリーダーの判断構造|INNERSHIFT

意思決定は重要だと言われます。
リーダーであればなおさら、「正しい判断を下すこと」が求められる場面は多いはずです。

情報を集める。
リスクを比較する。
より良い選択肢を選ぶ。

そうしたプロセスは、たしかに欠かせません。

ただ実際の現場では、少し違う感覚に出会うことがあります。

同じように情報を持っているはずなのに、
迷い続ける人と、決めて進める人がいる。

慎重に考えているはずなのに、
なぜか判断が遅れてしまう。

その違いは、どこから生まれているのでしょうか。


理想のリーダー像と、実際の成果のあいだにあるズレ

ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された
「高業績CEOの資質は4つの行動に表れる」(エレナ・リトキナ・ボテロ 他)は、
この問いに対して一つの示唆を与えています。

この研究では、CEO2000人を含む経営幹部1万7000人以上を対象に、
10年以上にわたって評価・経歴・行動パターンが分析されました。

その結果、明らかになったのは、
「理想とされるCEO像」と「実際に成果を上げるCEO」のあいだに、
はっきりとしたズレが存在しているということでした。

一般には、

・カリスマ性がある
・強い自信を持っている
・完璧な判断ができる

といった資質が重視されがちです。

しかし、これらは必ずしも成果にはつながっていませんでした。

むしろ、実際に成果を上げているリーダーたちは、
別のかたちで特徴づけられていたのです。


「正しい判断」よりも、「止まらない判断」

この研究では、高業績CEOに共通する行動として、
いくつかの特徴が示されています。

たとえば、

・「決断力がある」と評価された人材は、高業績CEOである確率が12倍
・変化への適応力が高いCEOは、成功確率が6.7倍

といった傾向が確認されています。

ただ、ここで重要なのは、
「どんな判断をしているか」よりも、
「どのように判断しているか」にあるように見えます。

高業績CEOは、常に正しい意思決定をしているわけではありません。

むしろ、

・情報が十分でなくても決める
・状況が変われば修正する
・迷い続けることを避ける

といった特徴を持っています。

言い換えると、
彼らは「正しい判断」を追い求めているのではなく、
「止まらない判断」を選び続けているとも言えそうです。


行動ではなく、「判断の置き方」が違う

ここで見えてくるのは、
意思決定の“質”そのものよりも、
意思決定をどこに置いているかの違いです。

研究で示された行動を、そのまま並べると、

・迅速に決断する
・周囲を巻き込む
・変化に適応する
・結果を出す

となります。

ただ、これらを行動として捉えると、
再現することは難しくなります。

むしろ、少し視点を変えると、こう見えてきます。

・決断する → 不確実な状況でも、立ち止まりすぎない
・巻き込む → 関係の中で前に進むことを選ぶ
・適応する → 変化する前提で考え続ける
・結果を出す → 現実に向き合い続ける

つまり、違っているのは行動そのものではなく、
「どこに立って判断しているか」なのかもしれません。


判断の前提にあるもの

では、その“立ち位置”はどこから生まれるのでしょうか。

ここで一つの接点として見えてくるのが、
Emotional Compassの特性である
誠実性です。
https://innershift.jp/twentyfour-traits/trait_18/

誠実性とは、

自分とは異なる意見や価値観に出会ったとき、
それをすぐに否定せず、関わり続ける力です。

「わからないけれど、聞いてみよう」
「すぐには答えが出ないけれど、離れないでおこう」

そうした姿勢が、この特性の核にあります。

不確実な状況で判断するということは、
ある意味で「わからないまま進む」ことでもあります。

そのとき、

・わからなさに耐えられるか
・異なる視点を排除しないでいられるか
・途中で関係を切らずにいられるか

といった点が、
判断のあり方に影響しているようにも見えます。


評価されるリーダーと、結果を出すリーダー

ここで改めて振り返ると、
私たちが評価しがちなリーダー像と、
実際に成果を上げるリーダー像には、少し距離があるようです。

評価されやすいのは、

・自信がある
・迷わない
・正しい答えを持っている

といった姿です。

一方で、実際に結果を出しているのは、

・不確実なままでも決める
・変わり続ける前提で考える
・関係の中にとどまり続ける

といった振る舞いをしている人たちです。

この違いは、能力の差というよりも、
どこに立って意思決定をしているかの違いとして見ることもできそうです。


その決断は、どこから来ているのか

意思決定を磨こうとするとき、
私たちはつい「より正しい判断」を求めてしまいます。

情報を増やし、
分析を深め、
失敗しない選択を探そうとする。

それ自体は自然な流れです。

ただ、今回の研究が示しているのは、
少し別の方向かもしれません。

判断の精度だけでなく、
どの位置に立って判断しているのか。

不確実な状況の中で、
どこにとどまり続けているのか。

その違いが、結果として現れている可能性もあります。

もしそうだとすると、
問われているのは「どう決めるか」だけではなく、

「どこから決めているのか」

なのかもしれません。

そのとき、自分はどこに立っているのでしょうか。


参考文献

エレナ・リトキナ・ボテロ 他
「高業績CEOの資質は4つの行動に表れる」(What Sets Successful CEOs Apart)
ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー(2018年5月号)


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