シェアド・リーダーシップ──リーダーシップを分かち合うチームは、どう生まれるのか

「誰かひとり」が背負うのではなく、「みんなで導く」チームへ。

変化の激しい環境では、ひとりのリーダーがすべてを決め、すべてを抱え込むやり方には限界があります。状況に応じて役割を分け合い、ときにはメンバーが前に出てリーダーシップを発揮する──そうした「シェアド・リーダーシップ」のあり方が、世界中の組織で模索されています。

このWayテーマでは、「リーダーシップは誰のものか?」という問いを起点に、役割・感情・関係を分かち合うチームづくりを考えていきます。

リーダーは“ひとり”で背負わなくていい

役割を分かち合うことで、チームの可能性は広がっていく。

会議でのファシリテーション、現場との調整、上層部とのコミュニケーション、メンバーの育成──気づけば、チームの要になりそうな仕事がすべてリーダーのもとに集まってしまうことがあります。

その状態が続くと、「自分が動かなければ進まない」という感覚が強まり、チーム全体の自律性が下がっていきます。メンバーもまた、「リーダーの判断を待つ」ことに慣れ、挑戦や提案の機会を手放してしまうかもしれません。

シェアド・リーダーシップは、リーダーシップの“総量”を増やす考え方です。ひとりのリーダーを弱めるのではなく、「場の中にリーダーシップがいくつも立ち上がる状態」をつくること。その起点は、「この役割は誰が担うと一番生きるか?」という問いを、チームで共有することにあります。

シェアド・リーダーシップを象徴するチームのイメージ

役割を分かち合うことは、“感情と責任”を分かち合うこと

立場だけでなく、「気持ち」「しんどさ」「誇り」も循環させていく。

リーダーシップを分かち合うと言っても、権限や役職を細かく分配するだけではうまくいきません。大切なのは、「誰が、どんな感情を引き受けているか」に目を向けることです。

たとえば、メンバーの声を受け止める役割を担う人には、不満や戸惑いが真っ先に届きます。挑戦を打ち出す役割を担う人には、期待と同時にプレッシャーも集まってきます。役割だけでなく、その背後にある“感情の負荷”までひとりに集中すると、どこかで限界が訪れます。

シェアド・リーダーシップは、役割を分解しながら、「どの感情を、誰と分かち合うか」をチームで設計していくプロセスでもあります。「誰が前に出るか」だけでなく、「誰が支え、誰が対話を担い、誰が場の温度を確かめるか」。その分担が見えるほど、チームは互いの負荷と貢献を理解しやすくなります。

感情・価値観・関係性をそろえていく──Emotional Compass とのつながり

「誰が向いているか」ではなく、「どう分かち合うと活きるか」を見つける。

シェアド・リーダーシップを育てるとき、よくある問いは「誰がリーダーに向いているか」です。しかし、Emotional Compass が大切にするのは、「どんな特性を、どう組み合わせるとチームが活きるか」という視点です。

たとえば、対話の場をつくることが得意な人、状況を俯瞰して整理することが得意な人、未知の挑戦に一歩踏み出すことが得意な人──それぞれの特性は、単体で完璧である必要はありません。むしろ「弱さ」や「ためらい」も含めて、組み合わせることでチーム全体の強みになります。

Emotional Compass では、シェアド・リーダーシップに関わる特性群(内省表現力、対話期待性、差異への耐性など)に着目しながら、「どのように役割と感情を分かち合うと、チームが前に進みやすくなるか」を考えていきます。

誰かひとりがすべてを抱え込むのではなく、特性の違いを認め合いながらリーダーシップを“分有”していくこと。そのプロセスを見つめ直すための鏡として、Emotional Compass を活用してもらえると嬉しいです。

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