なぜ成果主義の問題を構造として捉えるのか
成果主義のもとで生じる問題は、個々の判断や状況によって偶発的に起きるものではありません。
一定の条件のもとで繰り返し現れ、組織のなかに定着していく特徴があります。
そのため、単なる印象や個別の事例としてではなく、どのような要素が組み合わさって成立しているのかという観点から、構造として捉える必要があります。
構造として理解することで、行動や関係のなかで何が起きているのかが見えやすくなります。
評価の偏りが行動を方向づける
人の行動は、何が評価されるかによって大きく方向づけられます。
どのような成果が重視されるのか、どのような指標が評価の対象となるのか。
その前提が、日々の判断や行動の選択を規定していきます。
成果主義のもとでは、評価基準が明確であるほど、その影響は強くなります。
評価は単なる結果の測定ではなく、行動の前提として機能するようになります。
評価の集中が視野を限定する
一つ目の構造は、評価の集中です。
特定の指標や成果に評価が集まることで、それ以外の観点が見えにくくなります。
何が重要であるかの基準が固定され、判断の前提が限定されていきます。
この状態では、複数の観点から状況を捉える余地が小さくなり、行動の方向も一定の範囲に収まりやすくなります。
行動の制約が選択肢を狭める
二つ目の構造は、行動の制約です。
評価される行動が明確になるほど、それに沿った選択が優先されるようになります。
結果として、それ以外の行動は選ばれにくくなり、実質的な選択肢は減少します。
このとき、行動の幅は徐々に限定され、新しい試みや異なる視点からの行動が生まれにくくなります。
個人最適化が関係を分断する
三つ目の構造は、個人最適化です。
評価が個人単位で行われる場合、自分の成果を優先する行動が合理的な選択となります。
その結果、関係の中での相互作用よりも、自分の結果を最大化することが重視されやすくなります。
この状態では、関係のなかで意味を共有し、新しい価値を生み出す動きは弱まり、相互作用は成立しにくくなります。
三つの構造が相互に強化し合う
これら三つの構造は、それぞれ独立して存在するのではなく、相互に影響し合いながら状態を維持します。
評価が集中することで行動が制約され、行動が制約されることで個人最適化が進み、個人最適化が進むことでさらに評価基準への依存が強まります。
このようにして、行動と関係のあり方が一定の方向に固定されていきます。
その結果、関係のなかで新しい意味や方向性が生まれる余地は小さくなり、状態は維持され続けます。
リーダーシップ不発生の価値構造としての位置づけ
成果主義がもたらす問題の構造は、リーダーシップが発生しない状態を支える価値の側面を示しています。
「リーダーシップが発生しない状態とは何か」が全体の枠組みを示し、「モノローグの関係の構造」が関係の側面を示すのに対して、本記事は価値の前提がどのように影響しているかを構造として示しています。
これらはそれぞれ独立しているのではなく、相互に関係しながら状態を形成しています。
関係と価値の接続として理解する
成果主義がもたらす問題は、関係のあり方と切り離して理解することはできません。
- モノローグの関係の構造
- 成果主義がもたらす問題とは何か
これらをあわせて捉えることで、関係と価値の両面から構造を理解することができます。
また、このような価値の前提は、Emotional Compassにおける関係管理の観点とも接続しています。
参考文献
最上雄太. (2024). 「関係リーダーシップ」が発生しない関係プロセスのエスノグラフィー―「関係リーダーシップ」発生メカニズムの解明に向けて―. 経営情報学会誌, 33(1), 1-14.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjasmin/33/1/33_1/_article/-char/ja/
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