リーダーシップは「人」ではなく「関係の中で生まれる」
リーダーシップは、特定の個人に備わる能力として語られることが多くあります。
しかし近年の研究では、それは人に帰属するものではなく、人と人との相互作用のなかで成立するものとして捉えられています。
最上(2024)は、リーダーシップを「関係プロセス」として位置づけ、人々の相互作用を通じて意味や方向性が生み出される現象として理解しています。
この視点に立つと、リーダーシップは「ある・ない」ではなく、関係のなかで「発生しているか・していないか」として捉えられます。
では、リーダーシップが発生しない状態とは、どのような状態なのでしょうか。
個人ではなく「関係」で捉えるという前提
従来のリーダーシップ論では、リーダーの資質や行動に焦点が当てられてきました。
誰がリーダーで、どのように振る舞うかが中心的な関心でした。
一方で、関係プロセスとしてのリーダーシップは、その前提を大きく転換します。
重要なのは「誰か」ではなく、「どのような関係が成立しているか」です。
リーダーシップは、相互作用のなかで生成され、変化し続けるものとして理解されます。
このとき、関係のなかで意味が生まれ、共有され、更新されていくプロセスが成立していれば、そこにはリーダーシップが発生しているといえます。
逆に言えば、そのプロセスが成立していない状態こそが、リーダーシップが発生していない状態です。
相互作用が機能しないとき、何が起きるのか
リーダーシップが発生しない状態では、やり取りそのものが存在しないわけではありません。
会話や業務上のコミュニケーションは、表面的には成立していることも多いです。
しかし、そのやり取りが新しい意味や価値を生み出す方向には向かっていません。
それぞれが自分の立場にとどまり、関係のなかで意味が更新されないまま、既存の前提が繰り返され続けます。
対話が形成されず、相互作用が関係として機能していない状態です。
その結果、組織やチームのなかで新しい価値体系が生まれにくくなり、状況は固定化されていきます。
「何も起きていない」わけではないという誤解
ここで重要なのは、リーダーシップが発生していない状態は、単に「何も起きていない状態」ではないという点です。
人は存在していますし、業務も進んでいます。
指示や役割も明確に与えられていることが多いでしょう。
場合によっては、成果が出ていることさえあります。
それでも、関係のなかで意味が生成されず、相互作用が新しい方向性を生み出していない場合には、リーダーシップは発生していないと捉えられます。
つまり、リーダーシップの有無は、表面的な活動量ではなく、関係の質によって決まります。
この状態はどのように生まれるのか
リーダーシップが発生しない状態は、単一の要因によって生じるものではありません。
関係のあり方と、組織のなかで共有されている価値の前提が重なり合いながら、この状態が維持されます。
たとえば、
- 関係の側面では「モノローグの関係」
- 価値の側面では「成果主義がもたらす問題」
といった形で、より具体的な構造として現れます。
これらは個別の問題ではなく、相互に関係しながら状態を支えています。
関係と価値の両面から捉える必要がある
リーダーシップが発生しない状態を理解するには、
- 関係がどのようになっているのか
- どのような価値が前提となっているのか
この2つの視点をあわせて捉える必要があります。
次の記事では、
- モノローグの関係とは何か
- 成果主義がもたらす問題とは何か
について、それぞれの構造を具体的に見ていきます。
また、こうした状態は、Emotional Compassにおける関係管理の観点とも接続しています。
参考文献
最上雄太. (2024). 「関係リーダーシップ」が発生しない関係プロセスのエスノグラフィー―「関係リーダーシップ」発生メカニズムの解明に向けて―. 経営情報学会誌, 33(1), 1-14.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjasmin/33/1/33_1/_article/-char/ja/
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