人はなぜ「この人についていきたい」と思うのか──カリスマ・リーダーとの感情共鳴|INNERSHIFT

人はなぜ、ある人物に惹きつけられるのでしょうか。

同じ言葉を語っていても、ある人の言葉は強く心に残り、ある人の言葉はすぐに消えてしまいます。
同じ目標を掲げていても、「この人となら進める」と感じる瞬間があります。

こうした現象は、しばしば「カリスマ」という言葉で説明されます。

カリスマ・リーダーとは、人々を強く惹きつけ、周囲を動かす力を持つ存在です。
しかし、その力はどこから生まれるのでしょうか。

特別な人格なのでしょうか。
それとも、優れた戦略や判断力なのでしょうか。

近年の研究では、カリスマの核心は意外なところにあると考えられています。
それは、感情がどのように人のあいだで共有されるのかという問題です。


カリスマは「特別な人」の資質なのか

カリスマという言葉は、長く「特別な人物の魅力」として語られてきました。

歴史を振り返ると、多くのカリスマ的リーダーが登場します。
政治、社会運動、企業経営など、さまざまな場面で人々を惹きつけてきました。

こうした人物を見ると、カリスマは生まれつき備わった才能のようにも思えます。

しかし組織研究の分野では、この理解を見直す議論が進んでいます。

Antonakis ら(2022)は、カリスマ研究を整理する中で、カリスマを単なる人格特性として理解することの限界を指摘しています。

カリスマは「特別な人の資質」というよりも、人と人のあいだで起こるプロセスとして捉える必要があるというのです。


感情は人のあいだで広がる

人の感情は、意外なほど周囲に影響を与えます。

誰かが強い情熱をもって語ると、その熱量は周囲にも伝わります。
逆に、不安や迷いが強い場面では、集団全体の空気が重くなることもあります。

こうした現象は、心理学では 感情伝染(emotional contagion) と呼ばれます。

感情は、言葉だけでなく、

などを通して、周囲の人に伝わっていきます。

カリスマ・リーダーシップ研究では、こうした感情の共有プロセスが、人々の行動に大きな影響を与えると考えられています。

つまりカリスマとは、単に説得力のある言葉ではなく、感情が共鳴する関係の中で生まれる力でもあるのです。


共鳴する感情が人を動かす

カリスマ的な場面を思い浮かべると、多くの場合、そこには共通の感情があります。

あるビジョンに対する期待。
困難を乗り越えようとする意志。
未来に対する希望。

こうした感情が共有されるとき、人は「この人についていきたい」と感じることがあります。

それは必ずしも論理的な説得の結果ではありません。

むしろ、

この人は本気でそう思っている。
この人と同じ方向を見ている。

そうした感覚が、人の行動を後押しします。

カリスマとは、こうした感情の共鳴が生まれる瞬間の中で、初めて形になるのかもしれません。


感情を言葉にする力

Emotional Compassの24特性で考えると、カリスマ・リーダーシップにはいくつかの特性が関係してきます。

動機探索力
https://innershift.jp/twentyfour-traits/trait_02/

意図共有力
https://innershift.jp/twentyfour-traits/trait_11/

ブレイクスルー
https://innershift.jp/twentyfour-traits/trait_23/

たとえば、自分の内側にある思いや動機を深く探ること。
それを言葉として他者と共有すること。
そして既存の枠を越えて、新しい可能性を示すこと。

こうした働きが組み合わさるとき、人のあいだで感情が動き始めます。

カリスマは、単なる魅力ではなく、感情を言葉にし、人と共有するプロセスの中で生まれるのかもしれません。


カリスマは関係の中で生まれる

カリスマは一人のリーダーだけで成立するものではありません。

どれほど強い情熱を語っても、それが誰にも届かなければ、カリスマとは呼ばれないでしょう。

カリスマは、リーダーとフォロワーの関係の中で生まれます。

誰かの言葉が、人の感情に触れる。
その感情が周囲に広がる。
共鳴が生まれ、行動が動き始める。

そのとき初めて、私たちは「カリスマ」という言葉を使うのかもしれません。


人を動かすのは論理なのか

組織の中では、論理的な説明や合理的な判断が重要です。
しかし、人が行動を起こす瞬間を考えると、そこには必ず感情が関わっています。

未来への期待。
共通の不安。
乗り越えたいという意志。

人は、論理だけではなく、感情によっても動きます。

カリスマ・リーダーシップが示しているのは、その単純な事実かもしれません。

人を動かすのは、論理なのでしょうか。
それとも、共鳴する感情なのでしょうか。

「この人についていきたい」と思う瞬間には、どこかで感情が重なり合っているのかもしれません。


参考文献

Antonakis, J., Bastardoz, N., Jacquart, P., & Shamir, B.(2022)
Charisma: An ill-defined and ill-measured gift. Academy of Management Annals.


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