行動はどこから始まるのか|感情がつくる選択のメカニズム

執筆:最上 雄太

■ はじめに

「やろうと思っていたのに、なぜか動けなかった。」
「言わなくてもいい一言を、つい口にしてしまった。」
「本当は仲間を支えたいのに、距離を置いてしまった。」

仕事の現場では、こうした“意図と行動のズレ”が日常的に起きています。
しかし、そのズレの正体を言葉にできる人は、多くありません。

この第2話では、INNERSHIFTの思想を支える基盤である
EQリーダーシップ®の4因子(感情→行動→関係の循環) を、初めての方にもわかる形で開きます。


■ なぜ、人は意図通りに動けないのか──感情は行動の入口にある

私たちが行動を選ぶとき、実は「思考」より先に「感情」が動いています。
心理学者のリサ・フェルドマン・バレットは、

人の行動は、刺激そのものより“その刺激をどう解釈したか”に左右される
と述べています。

つまり、
同じ出来事でも、どんな感情が湧き、どう解釈したかによって、
まったく違う行動が生まれる のです。

たとえば:

違いは、感情の“意味づけ” にあります。

INNERSHIFTが重要視しているのは、
感情を抑えることではなく、“理解すること” です。

感情の理解は、行動の選び方を変え、
ひいては関係の質を変えていくからです。


■ EQリーダーシップ®の4因子──行動の仕組みを言葉にする

INNERSHIFTが採用している EQリーダーシップ® は、
感情→行動→関係の流れを4つの因子で整理します。

1. 自己認識(Self-Awareness)

自分の感情・状態を理解する力。
「なぜいま自分はこう感じたのか?」を扱える人ほど、行動の質が安定します。

2. 自己管理(Self-Management)

感情に振り回されず、行動を選び取る力。
怒り・焦り・不安を潰すのではなく、“意味を理解したうえで行動に翻訳する”力です。

3. 社会的認識(Social Awareness)

他者の状態・コンテクスト(置かれた状況)を理解する力。
共感・察知・空気の読みすぎない把握など、関係の基礎になります。

4. 関係管理(Relationship Management)

対話・調整・協働をつくり出す力。
チームの信頼と前進を支える、リーダーシップの“結果”がここに現れます。


■ 行動が変わると、関係が変わる──循環としてのリーダーシップ

「行動に気をつけよう」と思っても、感情の理解がなければ続きません。
対照的に、感情→行動→関係の流れが腑に落ちると、
小さな行動がチームの空気を大きく変え始めます。

たとえば:

リーダーシップは、
個人の性格ではなく、関係の中で立ち上がる現象 として理解する必要があります。


■ Emotional Compassが果たす役割──“いまの自分”を安全に観測する

EQリーダーシップ® を実践しようとしても、
「いま自分がどの因子で引っかかっているのか」を掴むのは難しいものです。

そこでINNERSHIFTは、24特性をもつ Emotional Compass を開発しています。

Compassは、

を“評価”ではなく “観察” するための装置です。

Simons(2002)が指摘する「言葉と行動のズレ」も、
Compassでは違和感として丁寧に拾われます。

これは、関係の変化を促すための最初の内省ステップです。


■ INNERSHIFTが提供している「学びの構造」

INNERSHIFTでは、以下の4つを連動させることで、
感情から関係が育つ流れを日常の中に実装します。

この第2話は、「感情→行動→関係」の仕組みを開きました。
次の第3話では、関係はどのように変化し、どんな物語が生まれていくのか を、
IS360 や JOURNAL の実例を通じてさらに掘り下げます。


🔗 関連記事(第1話・第3話)


▶ 第1話:リーダーシップはどこで生まれるのか──見落とされてきた“問い”の力
https://innershift.jp/about/where-leadership-begins/

▶ 第3話:関係はどのように変わるのか──対話が生み出す“組織の物語”

https://innershift.jp/about/how-relationships-change/


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📚 参考文献

Simons, T.(2002)“Behavioral Integrity: The Perceived Alignment Between Managers’ Words and Deeds as a Research Focus.” Organization Science, 13(1), 18–35.

最上雄太(2025)『人を幸せにする経営(Working Title)』(国際文献社)
https://amzn.to/48rqTqt

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