人は、相手から何を受け取ると「理解された」と感じるのか|INNERSHIFT

著者:Yuta Mogami, Ph.D.

🔍 記事を検索

AIは、以前よりも自然に会話できるようになりました。

悩みを相談すると、励ましの言葉を返してくれる。

不安を打ち明けると、共感しているような応答も返ってくる。

そのため最近では、

「AIは人を理解できるのか」

という問いも語られるようになっています。

こうした問いは新しいものに見えます。

しかし、人が「理解された」と感じるとは何か、という問いそのものは、ずっと以前から研究されてきました。

心理学者カール・ロジャースは、共感とは相手の内的世界を、その人の立場から理解しようとすることだと述べています。

そして近年、MITのTimothy BickmoreとRosalind Picardらは、人とAIとの関係性を研究する中で興味深い発見をしています。

人は、単に正しい情報を受け取ったから相手を信頼するわけではない。

むしろ、「自分に関心が向けられている」と感じた時に、関係性や理解感覚が生まれやすい。

技術は変わりました。

けれど、人は相手から何を受け取ると「理解された」と感じるのか。

その問いは、今もあまり変わっていないのかもしれません。

人は情報だけを理解してほしいわけではない

誰かに相談した時のことを思い出してみてください。

相手は話を最後まで聞いてくれた。

内容も正確に理解している。

それなのに、

「わかってもらえた」

という感覚が残らないことがあります。

反対に、問題そのものが解決していなくても、

「理解してもらえた」

と感じることもあります。

この違いはどこから生まれるのでしょうか。

私たちは、出来事や事実だけを理解してほしいわけではないのかもしれません。

人は「見方」を理解してほしい

同じ出来事でも、人によって見えているものは違います。

ある人はリスクを見ている。

ある人は可能性を見ている。

ある人は顧客への影響を気にしている。

ある人は仲間の負担を心配している。

だから、

「何が起きたか」

だけでは、その人を理解したことにはなりません。

本当に理解したいのは、

「その人が何を見ているのか」

なのかもしれません。

なぜそれを気にしているのか。

なぜそこに違和感を持っているのか。

なぜその選択を大切だと思うのか。

そうした見方に触れた時、人は初めて、

「わかってもらえた」

と感じることがあります。

意見を聴くことと、見方を聴くことは違う

会話の中では、意見が語られます。

賛成。

反対。

提案。

改善案。

しかし、意見だけを聴いていても、その人を理解したことにはならないことがあります。

たとえば、

「この施策には反対です」

という言葉だけでは、

なぜ反対なのかはわかりません。

現場への影響を心配しているのかもしれない。

顧客との関係を守ろうとしているのかもしれない。

過去の失敗経験を思い出しているのかもしれない。

つまり、人は意見だけを持っているのではなく、その背景にある見方を持っています。

そして、その見方を受け取ってもらえた時に、理解された感覚が生まれるのかもしれません。

傾聴力とは何か

Emotional Compassでは、「傾聴力」を24特性の一つとして扱っています。

傾聴力というと、

話を遮らない。

うなずく。

相づちを打つ。

といった技法として語られることがあります。

もちろん、それらも大切です。

しかし、傾聴力は単なる会話技術ではないのかもしれません。

相手が何を見ているのか。

何を大切にしているのか。

何に違和感を持っているのか。

そうした世界に耳を傾けようとする姿勢。

そこに傾聴力の本質があるようにも感じます。

AI時代になっても変わらないもの

AIはますます自然な言葉を返すようになっています。

適切な助言をすることもできる。

共感しているような応答もできる。

それでも、人が「理解された」と感じる問いは、昔からそれほど変わっていないのかもしれません。

人は、正しい答えを受け取った時だけでなく、

自分の見ている世界を受け取ってもらえた時にも、

「理解された」

と感じることがあります。

だから傾聴とは、言葉を集めることではなく、

相手が見ている世界に触れようとすることなのかもしれません。

参考文献

Carl R. Rogers (1957).
The Necessary and Sufficient Conditions of Therapeutic Personality Change.
Journal of Consulting Psychology, 21(2), 95–103.

Timothy Bickmore & Rosalind Picard.
Relational Agents: Theory and Practice of Building User Relationships with Computers.
MIT Media Lab 関連研究。

参考記事

なぜ人は話し合うほど、「一緒に考えなくなる」のか──「私は」が消える会議 #8

https://medium.com/@yumogami.est2k4/%E3%81%AA%E3%81%9C%E4%BA%BA%E3%81%AF%E8%A9%B1%E3%81%97%E5%90%88%E3%81%86%E3%81%BB%E3%81%A9-%E4%B8%80%E7%B7%92%E3%81%AB%E8%80%83%E3%81%88%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8B-%E3%81%AE%E3%81%8B-%E7%A7%81%E3%81%AF-%E3%81%8C%E6%B6%88%E3%81%88%E3%82%8B%E4%BC%9A%E8%AD%B0-8-380fc4ea88e1

INNERSHIFTからのお知らせ

公式サイト
https://innershift.jp

JOURNAL
https://innershift.jp/journal

Emotional Compass
https://innershift.jp/compass-diagnosis/

傾聴力
https://innershift.jp/twentyfour-traits/trait_08/

YouTube
https://www.youtube.com/@INNERSHIFT

LinkedIn
https://www.linkedin.com/in/yuta-mogami/

X
https://x.com/INNERSHIFT_JP

Facebook
https://www.facebook.com/INNERSHIFT