組織は「支えるリーダー」で強くなる──サーバント・リーダーの再評価|INNERSHIFT

私たちは「リーダー」と聞くと、どのような姿を思い浮かべるでしょうか。

組織の先頭に立ち、方向を示し、決断を下す人。
困難な局面では強くチームを引っ張り、メンバーを導く存在。

多くの場合、リーダーとは「前に立つ人」として想像されます。

しかし近年、こうしたイメージとは少し異なるリーダー像が、改めて注目されています。

それが サーバント・リーダーシップです。

サーバント・リーダーとは、組織の先頭に立って指示を出すよりも、むしろメンバーを支え、周囲が力を発揮できる環境を整えることに重きを置くリーダーの在り方です。

一見すると、主役ではなく「裏方」のようにも見えるこのリーダーシップが、なぜ今再び研究の対象となり、組織研究の中で注目されているのでしょうか。


支配ではなく「支える」リーダー

サーバント・リーダーシップという概念は、1970年代にロバート・グリーンリーフによって提唱されました。

その中心にあるのは、非常にシンプルな発想です。

リーダーとは、まず「支える人」である。

人を動かすことよりも、人が力を発揮できる状態をつくること。
組織を統率することよりも、メンバーが主体的に動ける環境を整えること。

この発想は、長く続いてきたリーダー像とは対照的です。

リーダーは権限を持ち、意思決定を行い、組織を率いる。
こうしたイメージと比べると、サーバント・リーダーはどこか控えめな存在に見えるかもしれません。

しかし近年の研究は、このリーダーシップが組織に与える影響を改めて明らかにしつつあります。


組織研究が示すサーバント・リーダーシップ

Lemoine, Hartnell, Leroy(2024)は、近年のサーバント・リーダーシップ研究を整理し、このリーダーシップが組織に与える影響について検討しています。

そこでは、サーバント・リーダーシップが次のような組織成果と関連していることが示されています。

たとえば、

といった要素です。

これらは、直接的に「成果を出すリーダーシップ」というよりも、組織の土台を強くするリーダーシップといえるかもしれません。

メンバーが安心して意見を言える。
互いに支え合いながら仕事が進む。
役割を超えて協力が生まれる。

こうした状態が整うことで、組織は自然に力を発揮していきます。

つまりサーバント・リーダーシップとは、成果を直接生み出すというよりも、成果が生まれる環境をつくるリーダーシップだといえるでしょう。


「環境を整える」というリーダーの役割

組織の成果は、多くの場合、個人の能力だけで決まるものではありません。

どのような関係性の中で働いているのか。
どの程度安心して発言できるのか。
失敗したときに、挑戦を続けられる環境があるのか。

こうした要素が、日々の行動を大きく左右します。

サーバント・リーダーは、こうした環境を支える役割を担います。

メンバーの声に耳を傾ける。
対話を通じて理解を深める。
挑戦や失敗を受け止める。

こうした姿勢が、チームの中に安心感を生み、互いに力を発揮できる関係を育てていきます。

Emotional Compassの24特性でいえば、たとえば次のような力が関係してきます。

傾聴力
https://innershift.jp/twentyfour-traits/trait_08/

対話期待性
https://innershift.jp/twentyfour-traits/trait_20/

失敗受容力
https://innershift.jp/twentyfour-traits/trait_21/

これらは、どれも「人を動かす力」というよりも、関係の中で働きかける力といえるでしょう。

サーバント・リーダーシップは、こうした力を土台として組織を支えていきます。


なぜ今、再評価されているのか

サーバント・リーダーシップが改めて注目されている背景には、働き方の変化があります。

現代の組織では、知識労働や創造的な仕事が増えています。
こうした仕事では、細かな指示や統制だけでは成果は生まれません。

むしろ、

自分の考えを自由に出せること
互いに学び合えること
安心して挑戦できること

こうした環境が重要になります。

その意味で、サーバント・リーダーシップは、単に「優しいリーダー」を指す概念ではありません。

それは、組織が力を発揮するための 環境設計のリーダーシップ ともいえるでしょう。


リーダーは前に立つ存在なのか

リーダーとは、常に前に立つ存在なのでしょうか。

それとも、周囲が前に進めるように場を整える存在なのでしょうか。

組織の中で力を発揮しているのは、いつも一人のリーダーとは限りません。
むしろ、メンバー同士の関係や信頼の中から、自然に力が生まれることもあります。

サーバント・リーダーシップは、そのような関係の中にリーダーシップを見いだそうとする考え方でもあります。

組織を動かすのは、リーダーの強さなのか。
それとも、人が力を発揮できる環境なのか。

サーバント・リーダーシップが再び注目されているのは、その問いが、今の組織にとって改めて重要になっているからかもしれません。


参考文献

Lemoine, G. J., Hartnell, C. A., & Leroy, H.(2024)
Servant leadership: A review and future research agenda. Leadership Quarterly.


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