最近、マッキンゼーの7Sモデルをあらためて見直す機会がありました。
新しいフレームワークに出会ったわけではありません。
経営や組織開発に携わる人であれば、一度は耳にしたことがある、よく知られたフレームワークです。
それでも、いま読み返してみると、以前とは違うものが見えてきました。
私が興味を引かれたのは、「7つの要素がある」ということではありません。
むしろ、私たちは組織の問題を、一つの原因で説明しようとしてしまうという、自分自身の思考の癖でした。
「戦略が悪い。」
「組織文化が問題だ。」
「人材が足りない。」
組織について議論するとき、私たちは原因を一つに絞ろうとします。
もちろん、それによって問題が整理されることもあります。
しかし、本当に組織は一つの要素だけで説明できるのでしょうか。
その問いを改めて考えさせてくれたのが、マッキンゼーの7Sモデルでした。
組織は、一つの要素だけでは成り立たない
あなたの組織では、最近どのようなテーマが議論されているでしょうか。
戦略でしょうか。
人材でしょうか。
制度でしょうか。
あるいは、組織文化でしょうか。
私たちは、どうしても一つのテーマに意識が向きやすくなります。
しかし、7Sモデルは、その見方に少し立ち止まるよう促します。
1980年代初頭、マッキンゼー・アンド・カンパニーのロバート・ウォーターマン、トム・ピーターズらによって提唱された**マッキンゼーの7Sモデル(McKinsey 7S Model)**は、組織を七つの要素が相互に影響し合う存在として捉えるフレームワークです。
七つの要素は、
- 戦略(Strategy)
- 組織構造(Structure)
- 制度・仕組み(Systems)
- 価値観(Shared Values)
- 人材スキル(Skills)
- 人材(Staff)
- リーダーシップスタイル(Style)
です。
ここで重要なのは、それぞれの意味を覚えることではありません。
このフレームワークが伝えようとしているのは、
組織は、一つの要素だけを見ても理解できない
という視点です。
なぜ、このモデルは今も使われ続けているのか
40年以上前に提唱されたフレームワークですが、いまも世界中の企業や行政機関、教育機関で活用されています。
その理由は、とてもシンプルです。
組織を取り巻く環境は変わっても、
組織は複数の要素が関係し合って成り立つ
という本質は変わらないからです。
例えば、AIを導入したとします。
これは制度・仕組みの変化です。
しかし、それだけで組織は変わるでしょうか。
人材スキルは追いついているでしょうか。
リーダーシップスタイルは変わっているでしょうか。
組織が大切にしたい価値観は共有されているでしょうか。
戦略は、その変化を支えているでしょうか。
もし他の要素が変わらなければ、新しい仕組みだけが組織の中で浮いてしまうかもしれません。
7Sモデルは、「何を変えるか」を教えてくれるというより、
何と何の整合性を見直すべきか
という視点を与えてくれるフレームワークなのです。
私があらためて印象に残ったこと
今回、7Sモデルを見直していて、私が最も印象に残ったのは、「価値観」が中央に置かれていること以上に、
七つの要素を切り離して考えていない
という設計思想でした。
現実の組織では、
戦略が人材へ影響し、
人材が組織文化へ影響し、
組織文化が制度へ影響し、
制度がリーダーシップの在り方へ影響します。
どこか一つだけを改善しても、他とのつながりが変わらなければ、大きな変化は生まれにくいのかもしれません。
私は、このフレームワークを「七つの項目を覚えるための表」ではなく、
組織全体を眺めるためのレンズ
として見直すようになりました。
あなたの組織を、七つの視点から眺めてみる
ここで少しだけ、読む手を止めてみてください。
頭の中に、あなたの組織を思い浮かべてみます。
正解を探す必要はありません。
どこに自然と目が向くのか、それを観察するだけでも、新しい気づきがあるかもしれません。
例えば、こんな問いはどうでしょうか。
- 私たちの戦略は明確だろうか。
- 組織構造は、その戦略を支えているだろうか。
- 制度や仕組みは、望む行動を後押ししているだろうか。
- 人材スキルは育っているだろうか。
- 人材配置は適切だろうか。
- リーダーは、どのような姿勢で組織を導いているだろうか。
- 私たちが本当に大切にしている価値観は、日々の行動に表れているだろうか。
そして、もう一つ問いを加えるなら、
いま最も議論されているのは、どの視点でしょうか。
反対に、
ほとんど話題になっていない視点はないでしょうか。
その偏り自体が、組織を見つめ直すヒントになるかもしれません。
Reflection
今日、あなた自身の組織について考えてみたい三つの問い
1.
あなたの組織では、最も時間をかけて議論しているのは、どの視点でしょうか。
2.
逆に、ほとんど議論されないままになっている視点はありませんか。
3.
もし一つの要素を変えようとしているなら、その変化は他の要素とも整合しているでしょうか。
Dialogue
この問いを、仲間と話してみませんか
組織について一人で考えていると、自分が普段見ている景色から離れることは簡単ではありません。
だからこそ、この問いを職場の仲間やチームで共有してみてください。
同じ組織を見ていても、人によって最初に目を向ける視点は驚くほど異なります。
その違いに触れることが、新しい問いや新しい発見につながることがあります。
おわりに
優れたフレームワークは、答えを与えてくれるものではありません。
見えていなかったものに気づくための「レンズ」を与えてくれるものです。
私にとって、今回あらためて見直した7Sモデルは、そのことを思い出させてくれるフレームワークでした。
組織を変えようとするとき、
「何を変えるか」だけではなく、
「何と何の関係を見直す必要があるのか」
という視点で組織を眺めてみる。
そのレンズを持つだけでも、これまでとは違う景色が見えてくるかもしれません。
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原典・参考文献
- Peters, T. J., & Waterman, R. H. (1982). In Search of Excellence. Harper & Row.
- Waterman, R. H., Peters, T. J., & Phillips, J. R. (1980). “Structure Is Not Organization.” Business Horizons, 23(3), 14–26.
- McKinsey & Company. The McKinsey 7S Framework.
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