内省表現力──気づきを言葉に変える勇気

執筆:最上 雄太

言葉にしない気づきは、まだ世界とつながっていない

ふとした瞬間に「何かに気づいた」のに、言葉にならないまま過ぎてしまうことがあります。
心の中では確かに理解しているのに、誰かに伝えようとすると急に曖昧になる。
リーダーとして経験を重ねるほど、この「言葉にならない気づき」は増えていきます。
けれど、気づきを言葉にしなければ、それはまだ“自分の中にあるだけの理解”です。
内省表現力とは、その内なる理解を他者と共有する力。
Emotional Compassにおいてこの特性は、自己管理(Self-Management)の後期に位置し、
「自分を整える」から「他者とつながる」へと橋をかける成熟した能力です。

Emotional Compassでは、本特性は自己認識(SA)因子に属します。

思考を言葉にすることは、自分を整えること

心理学者ブレネー・ブラウン(Brown, 2012)は『本当の勇気は「弱さ」を認めること(Daring Greatly)』の中で、
「脆弱性(vulnerability)を見せることは、信頼とつながりの起点になる」と述べています。
自分の感じたこと、迷ったこと、学びを言葉にする――それは、完璧さを示す行為ではなく、
“正直に生きようとする姿勢”を共有することです。
リーダーが内省を語るとき、その言葉には「同じ人間としての温度」が宿ります。
それが、チームに安心と共感の循環を生み出します。

気づきを共有することが、チームの学びを深める

最上雄太(2022)『シェアド・リーダーシップ入門』(国際文献社)は、
「気づきを共有することが、チーム全体の学びを深める」と述べています。
個人の経験が他者の気づきと重なり、新しい理解が生まれる。
その循環こそが、組織における“共有知”の芽生えです。
リーダーが自らの内省を開示することは、他者に学びを許す行為でもあります。
「自分も語っていいのだ」と感じられることで、チームに安心と自律が育つのです。

内省を分かち合うリーダーへ

言葉にする勇気とは、自己理解を他者との関係へと開くこと。
「正しい答え」を伝えるのではなく、「自分のいまの理解」を共有することが、
関係の誠実さを育てます。
内省表現力は、自己と他者をつなぐ対話の架け橋。
その橋を渡すとき、リーダーはもう一度、自分自身と出会い直しています。

──あなたの気づきを、誰と分かち合いたいですか?


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