差異への耐性とは
会議で自分と全く異なる意見が出たとき、思わず抵抗感を覚えてしまった経験はありませんか。頭では「多様性は大事」と分かっていても、実際には違いを受け入れるのが難しいと感じる場面は少なくありません。
Emotional Compassでは、本特性は関係管理(RM)因子に属します。
差異への耐性とは、自分と異なる価値観や行動様式を受け入れられる力を指します。
Emotional Compass では「関係管理(RM)」に属しており、チームや組織での協力関係を築くうえで欠かせない特性です。
この特性が弱めの傾向にあると、相手の違いに不安や抵抗を感じやすく、衝突や距離を生みやすいことがあります。
一方で、それは「自分の信念をしっかり守る」「同質性の高い場で安定感を発揮する」という強みの裏返しでもあります。
リーダーにとって差異への耐性は、心理的安全性や多様性を土台とした協働文化をつくるために重要です。違いを受け入れる姿勢を示すことで、メンバーは自分らしく意見を表明できるようになり、組織の創造性や柔軟性が高まります。
研究が示す差異への耐性の力
心理学の研究では、異質な集団が直面する「葛藤」は必ずしもマイナスではなく、むしろ創造性を高める要因になるとされています。心理学者ネメス(1986)は、多様な視点を受け入れることで新しいアイデアが生まれると指摘しました。つまり、違いへの耐性は創造的な問題解決の土台を築くのです。
実務の観点では、ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)の記事
『リーダーは「ありのまま全部」ではなく「最良の自分」を職場に持ち込むべき
(Why Leaders Should Bring Their Best Self, Not Their Whole Self, to Work)』で著者ら(2025)は、多様性の中で本音をそのまま出すことが必ずしも協働につながらないと指摘しています。むしろ、相手や状況に応じて自分を表現する柔軟さこそが、信頼と協力を育てるうえで重要だと述べています。
ここから導かれるのは、リーダーに求められるのは「差異を否定しない姿勢」です。相手の違いを受け止めつつ、自分の価値観を適切に調整して表現することで、違いが衝突ではなく学びや協働の源泉となります。
経営学の視点では、最上雄太(2025)が『人を幸せにする経営』の中で、多様性の受容は「幸福度と成果の両立」を支えるリーダーシップの基盤であると強調しています【Amazon】。また、先行研究(2022)『シェアド・リーダーシップ入門』でも、異なる視点を取り入れることがチームの持続的成長につながると論じています【Amazon】。
実践のためのレシピ
差異への耐性が弱めの傾向がある場合でも、次の工夫で「違いを受け入れる姿勢」を少しずつ育むことができます。
- 意見の違いを「質問」に変える
反論したくなったときに、「なぜそう考えるの?」と尋ねることで理解のきっかけをつくる。 - 共通点を先に確認する
相違点に注目する前に「ここは同じ考えだね」と示すと、安心感が生まれる。 - 異なる背景を想像する
相手の立場や経験を思い描く習慣を持つと、違いを脅威ではなく情報源として捉えやすくなる。 - 小さな多様性に慣れる
普段の選択(食事・趣味・交流)で「自分とは違うもの」をあえて取り入れると、違いへの耐性が徐々に育つ。
信頼を育むリーダーへ
リーダーが差異への耐性を持って行動すると、チームは「自分の違いを受け止めてもらえる」と感じ、安心して意見を表明できるようになります。これは心理的安全性を高め、異なる発想や視点がぶつかり合うことで新しい解決策やアイデアが生まれる基盤となります。
一方で、自分の信念を保ちながら違いを受け入れるバランスを示すことで、チームにとって「柔軟だがぶれない」リーダー像を築くことができます。
あなた自身は?
最近、相手の考えや価値観が自分と大きく異なると感じたことはありましたか?
そのときに、あなたはどのように対応しましたか?
次に同じような状況に出会ったら、どんな一歩を踏み出すことで「違いを脅威」ではなく「学びの種」として受け止められるでしょうか?
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参考・出典
- Nemeth, C. J. (1986). Differential contributions of majority and minority influence. Psychological Review.
- Harvard Business Review, 『リーダーは「ありのまま全部」ではなく「最良の自分」を職場に持ち込むべき(Why Leaders Should Bring Their Best Self, Not Their Whole Self, to Work)』, 2025|https://hbr.org/2025/07/why-leaders-should-bring-their-best-self-not-their-whole-self-to-work
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