試練のあとに見えるもの──「折れないこと」より「回復力」
折れた枝は、もう戻らない。けれど、枝の先から新しい芽が伸びていくことがあります。人も同じです。挫折や失敗のあとに、元の形へ戻ろうとするよりも、別の形で生き直すとき、本当の意味での「立ち直り」が始まります。レジリエンスとは、ただ“折れない心”ではなく、“折れても育つ心”。それは、困難を糧に変えていく、しなやかな回復力です。
Emotional Compassでは、本特性は自己認識(SA)因子に属します。
日常の中にある「Ordinary Magic」──特別ではない回復力
心理学者のMasten(2001)は、レジリエンスを「Ordinary Magic(ありふれた魔法)」と呼びました。特別な資質ではなく、誰もが持つ日常の回復力だと示しています。大切なのは、痛みを否定することではなく、それを受けとめながら前へ進む姿勢です。外から見れば静かでも、内側では意味づけの再構築が起こっている。強さとは、感情を押し殺すことではなく、揺れながらも歩みを止めない柔らかさなのです。
現実を受け入れ、意味を見いだし、即興する──不確実な現場でのレジリエンス
ハーバード・ビジネス・レビューの記事「レジリエンスのしくみ(How Resilience Works)」ダイアン・クーツ(Coutu, 2002)では、ビジネスの現場における回復力を、「現実を直視し、意味を見いだし、即興する力」として描いています。困難を避けるのではなく、受けとめながら形を変えていく。その姿勢こそが、組織を長く生かす“実務的なしなやかさ”です。リーダーがこの3つの力を発揮するとき、チームは不確実な状況の中でも前を向くことができます。
失敗を分かち合うリーダー──「立ち直り」を見せる勇気
最上(2025)『人を幸せにする経営』では、失敗を共有する文化を持つ組織こそ、成長の余白があると述べています。リーダーが自らのつまずきを隠さず語るとき、チームは安心して挑戦できます。「立ち直り方を見せるリーダー」は、言葉で励ますよりも深く、周囲に勇気を伝える存在です。完璧さではなく、再起の姿そのものが信頼を生むのです。
小さな再構築の習慣──回復をチームの文化にする
レジリエンスを鍛える第一歩は、小さな“再構築”の習慣から。失ったものを数えるより、いま残っているものを紙に書き出してみる。それだけで、心の焦点が変わり、次に進む力が戻ってきます。そしてチームでは、「小さな回復の共有」を習慣にする。昨日より少し笑えたこと、誰かに支えられたこと。そんな記憶が、挑戦の土台になります。
あなたは、どんな失敗から学び直していますか
壊れた枝が新しい芽を出すように、人もまた、折れた経験の中から新しい自分を育てることができます。あなたは今、どんな失敗から“何かを学び直して”いますか。
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🔗 参考文献
Masten, A. S. (2001). Ordinary Magic: Resilience Processes in Development. American Psychologist, 56(3), 227–238.
クーツ, D.(Coutu, D. L.)(2002). 「レジリエンスのしくみ(How Resilience Works)」 Harvard Business Review. https://hbr.org/2002/05/how-resilience-works
『人を幸せにする経営』(最上雄太, 2025, 国際文献社) → Amazonリンク
『シェアド・リーダーシップ入門』(最上雄太, 2022, 国際文献社) → Amazonリンク