壊れた枝が、新しい芽を出すとき
折れた枝を見つけたとき、その先に小さな芽が出ているのを見て、
ハッとした経験はないでしょうか。
一度折れたとしても、枝はそこで終わりではない。
新しい芽を出し、別の形で生きようとする。
私たちの心もまた、同じように再生していきます。
失敗や挫折を経て、痛みを知ったあとにこそ、
新しい価値観や優しさが芽生える。
レジリエンスとは、元に戻る力ではなく、
変化の中から新しい自分を育てていく力なのです。
Emotional Compassでは、本特性は自己認識(SA)因子に属します。
本稿では、“成長的回復(Growing Forward)”という視点から、
しなやかに変化を受け入れるリーダーシップを探ります。
「元に戻る」のではなく、「前に進む」力
作家でありパフォーマンス心理学の研究者でもあるブラッド・スタルバーグ(Brad Stulberg, 2023)は、
自身の記事『レジリエンスとは跳ね返ることではなく、前に進むこと(Resilience Is Not About Bouncing Back. It’s About Moving Forward.)』の中で、
レジリエンスをこう定義しています。
“Resilience isn’t about getting back to where you were before. It’s about growing from where you are now.”
「レジリエンスとは、以前の状態に戻ることではなく、いまいる場所から成長していくことだ。」
スタルバーグは、逆境を単なる「回復の対象」としてではなく、
「変化と成長の契機」として捉える視点を示しました。
彼によれば、困難を経験したあとに生まれる痛みや違和感を、
“欠損”ではなく“新しい始まり”として受け止めることが、真の回復につながるのです。
このとき重要なのは、「完全に立ち直ること」を目標にしないことです。
むしろ、痛みを抱えたままでも前に進むことで、人はより深い自己理解に至る。
スタルバーグは、“resilience as evolution(進化としてのレジリエンス)”という考えを通して、
「壊れた経験が人を成熟させ、より人間的な強さを生み出す」と述べています。
この考え方は、現代のリーダーシップにおけるレジリエンスを再定義します。
それは「強く立ち直る力」ではなく、
変化の中で新しい意味を見いだす知性。
静かな再生の過程こそが、成長の本質を映し出しているのです。
痛みを共有するリーダーシップ
最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社)では、
「傷ついた経験を共有できるリーダーは、組織を優しく強くする」と述べられています。
失敗を隠すのではなく、ありのまま語ることで、
人と人の間に“安心して挑戦できる文化”が育まれていく。
レジリエンスとは、個人の回復力であると同時に、
他者と共に“再生の場”をつくる社会的な力でもあります。
傷つくことを恐れず、痛みを抱えながらも歩み続ける。
その姿勢が、周囲に希望を伝え、組織のしなやかさを育てていくのです。
あなたの中に芽生える“再生の力”
レジリエンスは、特別な才能ではありません。
日々の小さな失敗や迷いのなかで、何度でもやり直す力です。
そして、そのたびに少しずつ形を変えながら成長していく。
あなたの中で、どんな“再生の芽”が育っていますか?
それに気づいたとき、あなたのレジリエンスは、すでに静かに動き始めているのかもしれません。
参考文献
- Brad Stulberg(2023)『Resilience Is Not About Bouncing Back. It’s About Moving Forward.』Medium.
https://medium.com/personal-growth/resilience-is-not-about-bouncing-back-its-about-moving-forward-6eca35ce2f41 - 最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社) https://amzn.to/4n7WstO
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