心の波を整える力──静けさがチームに調和をもたらす|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太


感情の波とともに生きる

焦りや苛立ち、不安や緊張。
誰にでも訪れるその波に、私たちはときに押し流されそうになります。
けれど、感情は敵ではありません。
それは、心が「何かを大切にしている」証。
情動調整力とは、その波を抑えつけるのではなく、穏やかに整える力のことです。

Emotional Compassでは、本特性は自己管理(SM)因子に属します。

Emotional Compassにおいて、この力は自己管理(Self-Management)の中核を担います。
自分の内側で起こる揺れを観察し、静けさの方向へと少しずつ舵を切る。
それは、リーダーとしての調和を保つ最初の一歩です。


🍃 感情を“抑える”のではなく、“整える”

心理学者ジェームズ・グロス(Gross, 1998)は、感情を制御する方法として「再評価(Reappraisal)」と「抑制(Suppression)」を区別しました。
彼の研究は、感情を抑え込むことが一時的な安定をもたらしても、長期的には心身の負荷を高めることを示しています。
一方で「再評価」は、出来事の意味づけを新たにすることで感情の波そのものを穏やかに変化させる手法です。

たとえば、部下のミスに怒りが湧いたとき、
「どうして失敗したのか」ではなく、「何を学べるだろう」と捉え直す。
それだけで、感情の質は驚くほど変わります。
情動調整とは、反応の瞬間に“意味を選び直す”行為なのです。


☁️ 静けさを取り戻すという知性

怒りや焦りを否定せずに受け入れ、波を整えるリーダーほど、チームに安心をもたらします。
最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』[https://amzn.to/4n7WstO]では、
「リーダーの静けさは、場の秩序をつくる」と述べられています。
この“静けさ”は感情を消す冷静さではなく、関係の中で呼吸を整える知性です。
情動を調整する力は、自分のためだけでなく、他者に安心のリズムを伝える力でもあるのです。


🌬 実践:心の波を整えるための小さな習慣

・感情が高ぶったとき、3回深呼吸をして「波がある」と言葉にする。
・1日の終わりに、「今日、心が動いた瞬間」を3つ書き出す。
・“不安”“焦り”“怒り”といった感情を名づけるだけで距離が生まれる。

これらは単なるリラクゼーションではありません。
自分の感情に気づきの光を当てる行為です。
その光が、心の波を静かに鎮めていきます。


🌙 まとめと問い

情動調整力とは、感情を抑え込む力ではなく、感情と共に呼吸する力です。
波のある心に寄り添いながら、意味を選び直すことで、内的な静けさが育まれる。
その静けさこそが、チームに調和と信頼をもたらすのです。

今日、心の波を整えるために、あなたは何を手放せますか。


🔗 関連リンク:心の波を整える力──静けさがチームに調和をもたらす


✨ INNERSHIFTからのお知らせ

📘 公式サイト:innershift.jp
✍️ JOURNAL:innershift.jp/journal
🧭 Emotional Compass:innershift.jp/compass
🎥 YouTubeチャンネル:INNERSHIFT Channel
💼 LinkedIn:Yuta Mogami
🐦 X(旧Twitter):INNERSHIFT_JP
📘 Facebookページ:INNERSHIFT


📚 参考文献

Gross, J. J. (1998). The emerging field of emotion regulation: An integrative review. Review of General Psychology, 2(3), 271–299.
最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社)|https://amzn.to/4n7WstO

関連記事

このページに関連する特集記事をご紹介いたします