感じ取るリーダーシップ──共感の力がつなぐ信頼 | INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

音楽のように、相手の“間”を聴く

音楽を聴くとき、私たちは音だけでなく、その“間”を感じ取っています。
同じメロディでも、奏でる人によって響き方が違うのは、その間合いに心が込められているからです。

Emotional Compassでは、本特性は社会的認識(SO)因子に属します。

人との関係もまた、言葉だけではなく、沈黙やまなざし、呼吸のリズムといった“間”に感情が宿ります。
その微かな変化に気づける人ほど、相手の心に寄り添えるのではないでしょうか。

Emotional Compassでは、この力を「共感的感度(Empathic Sensitivity)」と呼び、社会的認識(Social Awareness)因子に位置づけています。
本稿では、“感じ取る共感”──言葉よりも先に、心の動きに気づくリーダーシップを探ります。


🌿 “感じ取る共感”は、相手の内側にチューニングすることから始まる

心理学者ダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman, 2006)は著書『ソーシャル・インテリジェンス(Social Intelligence: The New Science of Human Relationships)』の中で、共感(empathy)を「他者の情動信号を読み取る能力」と定義しています。

“Empathy begins with attunement — sensing others’ inner states.”
(共感は、他者の内的な状態に同調し、感じ取ることから始まる。)

ゴールマンは、人間関係の質を決めるのは「言葉」よりも「感受の精度」であると指摘します。
表情のわずかな動きや声のトーン、沈黙の長さや呼吸の速さといった、非言語的な情報を読み取ることこそ、共感の出発点だというのです。

この“attunement(同調・感受の調律)”とは、相手の感情をそのまま背負うことではありません。
むしろ、自分の内側を静かに整え、相手のリズムに一瞬だけ合わせるような行為。
それは、他者を理解するための「聴く」姿勢とも言えるでしょう。

リーダーがこの感受のチューニングを意識できると、チームの中にやわらかな安心感が生まれます。
共感的感度とは、相手の中に入り込むことではなく、相手の存在を感じ取り、その空気に寄り添う力なのです。


🌸 共感とは、寄り添うことから始まる

最上雄太(2022)『シェアド・リーダーシップ入門』(国際文献社)では、「共感とは、相手の感情に“入る”ことではなく、“寄り添う”こと」と述べています。
リーダーが他者の感情をそのまま背負ってしまうと、関係のバランスを崩してしまうことがある。
けれど、少し距離を保ちながら相手の存在を受け止めるとき、そこに信頼が芽生えます。

共感とは、同化ではなく対話です。
相手の気持ちに耳を傾け、その人のリズムに寄り添うことで、チームは安心して意見を交わすことができます。
リーダーがその静かな余白をつくることが、心理的安全性の土台になるのです。


🌙 あなたは、どんな“沈黙”に気づけていますか?

沈黙は、何も語らない時間ではありません。
その中には、相手の思いや戸惑い、信頼への小さなサインが隠れています。
共感的感度とは、それを感じ取るための感性を磨くこと。

聴くことの奥にある、感じ取るという知性。
それが、チームを穏やかに包み込むリーダーの共感力です。



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