リーダーは、どこまで部下を助けるべきなのか。──サーバントリーダーが本当に「仕える」もの|INNERSHIFT

著者:Yuta Mogami, Ph.D.

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部下が困っているとき、リーダーは手を差し伸べるべきでしょうか。

仕事を代わりに引き受ければ、目の前の負担は減ります。答えを示せば、迷わず先へ進めるかもしれません。助けようとする気持ちは、リーダーにとって大切なものです。

けれども、助けたことで、相手が自分で考える機会まで奪ってしまうことはないでしょうか。

反対に、「成長のためだから」と任せ続けることが、必要な支援から目を背ける口実になってはいないでしょうか。

サーバント・リーダーシップは、他者に仕えることを重視します。では、その「仕える」とは、相手のために何でもしてあげることなのでしょうか。

助けることは、本当に相手のためになるのか

部下から相談を受けたとき、経験のあるリーダーほど、解決策がすぐに見えることがあります。自分がやったほうが早い。そう感じる場面もあるでしょう。

期限が迫っているとき、本人の負担が大きすぎるとき、重大な問題が起きそうなときには、リーダーが仕事を引き取ることも必要です。支援をためらうべきではない状況があります。

しかし、いつも答えを先に示していたら、部下は自分で状況を読み、選択し、結果を引き受ける機会をどこで得るのでしょう。

自己決定理論を整理したRyanとDeci(2000)は、自律性、有能感、関係性を、人の動機づけや健やかな発達を考えるうえで重要な心理的欲求として論じています。この研究は「上司が助けすぎると部下は必ず成長しない」と証明したものではありません。それでも、支援のあり方を考える視点を与えてくれます。

助けることによって、相手は自分の力を発揮しやすくなっているでしょうか。それとも、リーダーがいなければ判断できない状況をつくっているでしょうか。

助けたという事実と、相手のためになったという結果は、同じではありません。

リーダーは、相手の何を理解しているのか

何を手伝うべきかは、リーダーの経験だけでは決められません。

同じ仕事に行き詰まっているように見えても、必要なものは人によって異なります。知識が足りない人もいれば、考えはあるのに決める自信を持てない人もいます。仕事量が限界に達している人もいるでしょう。

ここで必要なのは、まず相手の状況を知ろうとすることです。

「どこで困っていますか」「今は何を試そうとしていますか」「私にしてほしいことはありますか」。こうした問いを通じて、本人が見ている景色に近づくことができます。

もちろん、本人の希望をすべて受け入れることが支援ではありません。本人には見えていない危険や、組織として守るべき約束もあります。だからこそ、リーダーは相手の話を聞いたうえで、自分の責任も引き受けなければなりません。

Emotional Compassの「サーバント・リーダー」は、「相手を支え、成長を後押しすることに力を注ぎます。前に出るよりも、周囲が力を発揮できる環境を整えることで組織を動かします」と定義されています。

この定義にある「環境を整える」という言葉は、重要な問いを含んでいます。相手に代わって行動することと、相手が行動できる条件を整えることは、必ずしも同じではないからです。

相手のために何をするか。その答えを、相手抜きで決めてしまってよいのでしょうか。

失敗させないことが、支援なのか

部下の失敗を防ぎたいと思うのは自然なことです。リーダーには、品質、安全、顧客との約束、組織の信用を守る責任があります。

一方で、失敗する可能性をすべて取り除いたら、本人が試し、振り返り、次の判断に生かす機会も減るかもしれません。

大切なのは、失敗を許すか許さないかという二者択一ではありません。どのような失敗なら学び直せるのか。どのような危険は事前に防がなければならないのか。その違いを考えることです。

たとえば、試行錯誤を認められる仕事であれば、リーダーは答えを先回りして渡さず、本人の考えを確かめながら見守ることができます。しかし、人命や重大な損害に関わる場面で、経験のために任せきりにすることはできません。

ここには、部下の成長を願う気持ちと、リーダーとしての責任が同時に存在しています。

けれども、もう一つ問いがあります。私たちは本当に、部下のためだけに失敗を防ごうとしているのでしょうか。

部下が失敗すれば、説明を求められるのは自分かもしれません。予定が狂い、関係者への対応も増えます。そうした負担を避けたい気持ちが、先回りして答えを渡す行動に混じっている可能性はないでしょうか。これは研究によってすべてのリーダーに確認された動機ではなく、自分の関わり方を振り返るための問いです。

もちろん、リーダー自身の不安があるからといって、介入が誤りになるわけではありません。守るべき安全や約束があるときは、ためらわずに止める責任があります。問われるのは、その介入が何を守り、相手からどのような機会を奪う可能性があるのかを、自覚しているかどうかです。

失敗を受け入れることは、失敗を放置することではありません。失敗から学べる条件を整え、必要なときには介入する。その判断から逃げないことも、支援の一部です。

助けることと、任せることの境界

「任せる」という言葉は、リーダーにとって便利です。相手を信頼しているとも言えますし、成長を期待しているとも言えます。

しかし、任せた後に関心を失い、困っていることにも気づかないのであれば、それは信頼ではなく放任かもしれません。

Skogstadら(2007)は、リーダーが必要な役割を果たさない放任的な行動と、職場のストレス要因などとの関連を検討しています。この研究は、権限を委ねること自体が有害だと示すものではありません。むしろ、任せることと、必要な関与を失うことを区別するうえで参考になります。

反対に、頻繁に進捗を確認し、細かな判断まで口を出すことが、常に責任ある関与になるとも限りません。

部下の意思を尊重すること。必要な情報や資源を渡すこと。問題が起きたときに相談できる関係を保つこと。そして、最終的にリーダーが引き受けるべき責任を曖昧にしないこと。

これらを同時に考えようとすると、助けることと任せることの間に、単純な境界線は引けません。

その境界は、相手の経験や状況、仕事の性質、失敗したときの影響によって変わります。

たとえば、途中で声をかけるという同じ行動でも、初めての仕事に戸惑う人には安心につながり、自分の考えを試したい人には監視と受け取られるかもしれません。逆に、口を出さずに待つことが信頼になる場合もあれば、助けを求められない人を孤立させる場合もあります。

「相手のために」という善意は、行動の出発点にはなっても、適切さの証明にはなりません。そして「自律性を尊重している」という言葉も、必要な関与を避ける理由になり得ます。リーダーは自分の意図だけでなく、相手が実際に置かれた状況と、自分が負う責任の両方を見なければならないのです。

だからこそ、リーダーは「助けるべきか、任せるべきか」という問いを、一度決めて終わりにできないのです。

サーバントリーダーが本当に「仕える」もの

ロバート・K・グリーンリーフは、1970年の『The Servant as Leader』で、まず仕えたいという思いがあり、そのうえでリーダーになることを選ぶ、という考え方を示しました。

そして、仕えられた人々が人間として成長しているか、より自由で自律的になっているか、さらに自分も他者に仕えるようになるかを、重要な問いとして掲げました。社会で不利な立場にある人々にどのような影響が及ぶかも問うています。

ここで問われているのは、リーダーがどれだけ親切にしたか、どれほど多くの仕事を引き受けたかではありません。

相手が「助けてほしい」と望むとき、その希望を聞くことは大切です。しかし、望まれたことをすべて代わりに行えば、本人が選び、試し、引き受ける余地が狭まるかもしれません。反対に、長期的な成長を理由に本人の希望を退け続ければ、リーダーの考える「成長」を押しつけることになります。どちらも、相手を中心に考えているようで、相手の意思を置き去りにしかねません。

その関わりによって、人はどうなっていくのか。

Evaら(2019)のレビューも、サーバント・リーダーシップを、部下一人ひとりの必要や関心に向き合うことと、組織やより広い共同体へと関心を向けることを含むリーダーシップとして整理しています。

目の前の部下の希望だけをかなえることでも、組織の成果のために部下を手段として扱うことでもありません。本人の意思や成長と、周囲の人々への責任を切り離さずに考えることが求められます。

だから、「仕える」ことは、相手の希望に従うこととも、相手の代わりに判断することとも違います。本人が何を望み、何を引き受けられるのかをともに確かめながら、リーダーが守るべき責任も隠さずに向き合うことです。ときには希望に応え、ときには応えられない理由を説明する。その関わりが本人の尊厳や自律性を損なっていないかまで、問い続ける必要があります。

さらに、一人の部下にとって望ましいことが、別の部下や顧客、組織全体に負担を移す場合もあります。だからといって、組織成果を理由に個人の成長を後回しにしてよいわけでもありません。目の前の一人と、その人を取り巻く人々の双方に目を向けるところに、この思想の難しさがあります。

その意味で、Emotional Compassの定義にある「周囲が力を発揮できる環境を整える」という表現は、私たちが日々の関わり方を問い直す手がかりになります。ただし、これは診断タイプの定義と学術的な理論を概念的に接続した考察であり、両者が同一のものだという意味ではありません。

部下が困っているとき、手を差し伸べることが必要かもしれません。あえて答えを渡さず、考える時間を残すほうがよい場合もあるでしょう。どちらの場合も、リーダーは自分の善意だけで正しさを決めることはできません。

相手の声を聞き、状況を確かめ、自分の関わり方が相手の力を広げているかを問い直す。必要なときには助け、任せるときにも責任を手放さない。

「何かをしてあげたか」ではなく、「その人が自分の力を発揮できる可能性に、私はどう責任を持っているか」。支援の量だけでは答えられない問いが、ここにあります。

サーバントリーダーが本当に仕えるのは、自分の「助けてあげたい」という気持ちではありません。相手が自らの力を発揮し、成長し、その力を周囲にも生かしていける可能性です。

では、いま自分がしている支援は、その可能性を広げているでしょうか。

参考文献

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リーダーシップ、組織、感情について。関心のあるテーマから、次の問いを見つけてください。

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