AIの進化によって、仕事のやり方は確実に変わりつつあります。
資料作成、分析、判断補助──これまで人が担ってきた業務の一部は、すでにAIが肩代わりし始めています。
こうした変化を受けて、多くの議論は「AI時代に必要なスキルは何か」という問いに向かいます。
しかし現場では、スキルを学んでも成果につながらない、そんな違和感が残っているのではないでしょうか。
本当に問うべきなのは、スキルそのものではなく、リーダーが引き受ける役割が書き換えられているかどうかなのかもしれません。
HBRが示した「AI時代に必要な5つのスキル」
ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)は、
5 Critical Skills Leaders Need in the Age of AI において、AI時代に求められる5つのスキルを提示しています。
そこでは、AIリテラシーや外部ネットワークとの接続力、
組織やプロセスを再設計する力、
AIを含めた意思決定を行う力、
学習と再スキル化を支える力、
そして自ら使い、行動で示す力が挙げられています。
いずれも妥当であり、多くの現場感覚とも一致しています。
AIを導入するだけではなく、使い方や意思決定のあり方まで含めて考える必要がある。
この整理自体に、大きな違和感はありません。
それは「スキル」ではなく、「役割」なのではないか
ただし、ここで一度立ち止まって考えたい点があります。
これらは本当に「個人が身につけるスキル」なのでしょうか。
よく見ると、提示されている内容の多くは、
組織の中で誰が引き受けるのかを決めなければ機能しないものです。
AIをどう位置づけるか。
意思決定の場にどう組み込むか。
学習や再設計を誰が支えるのか。
これは能力の話というより、
役割の割り当てと引き受けの問題に近いのではないでしょうか。
AI時代のリーダーは、「できる人」であること以上に、
「何を引き受ける人か」が問われる存在になっています。
AI時代のリーダーに求められる5つの役割転換
AI時代のリーダーシップは、スキルを積み上げることよりも、
役割を引き受け直すことから始まります。
まず求められるのは、境界を越える人としての役割です。
技術と現場、組織と外部、専門領域同士をつなぎ、意味を翻訳する存在であること。
次に、組織を描き直す人としての役割があります。
AIを前提に、業務や意思決定の構造そのものを再設計する視点です。
三つ目は、意思決定を編成する人。
AIを単なる道具ではなく、どの場面で、どの立場として意思決定に関与させるのかを設計します。
四つ目は、学習を支える人です。
管理する立場から、仕事を通じた学びを支える存在へと役割を移行させること。
そして最後に、使っている姿を見せる人。
語るよりも、試している姿が組織文化を形づくります。
これらは特別な才能ではありません。
引き受けるかどうかの選択です。
スキルを「持つ」時代から、役割を「引き受ける」時代へ
AIは、人ができることを大きく拡張します。
しかし、組織で成果が生まれるかどうかは、
誰が、どの役割を引き受けているかによって決まります。
リーダーシップは、能力の証明ではありません。
役割を引き受けるという、意思の表明です。
AIが仕事を変えた今、
あなたはどの役割を引き受けているでしょうか。
参考文献
Harvard Business Review
5 Critical Skills Leaders Need in the Age of AI
https://hbr.org/2025/10/5-critical-skills-leaders-need-in-the-age-of-ai
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