変化は、ひとりでは起こせない|ブレイクスルーと関係のあいだ|INNERSHIFT

ブレイクスルーという言葉は、
どこか個人的なものとして語られることが多いように思います。

発想の転換。
ひらめき。
既存の前提を乗り越える力。

そうしたイメージは、たしかに一部を捉えています。

ただ実際の場面では、
少し違う感覚に出会うことがあります。

新しい考えが生まれても、
それが動き出さない。

問いは立っているのに、
何も変わらない。

その違いは、どこにあるのでしょうか。


発想は生まれているのに、進まない

組織の中で、新しいアイデアが出ること自体は珍しくありません。

これまでのやり方を問い直す声。
別の見方を持ち込む提案。
既存の枠組みに収まらない試み。

それでも、多くの場合、それらはそのまま留まります。

「いい視点だと思う」
「でも、いまは難しい」
「もう少し様子を見よう」

そうしたやり取りの中で、
問いは少しずつ静かになっていきます。

発想が足りないわけではない。
意欲がないわけでもない。

それでも進まないのは、
別の要因が関わっているようにも見えます。


変化は、どこで立ち上がるのか

イノベーションに関する研究では、
新しいアイデアが広がる過程は、個人の発想だけでは説明できないとされています。

たとえば、エベレット・ロジャースの「イノベーション普及理論」では、
新しい考えや行動が広がるためには、
それが周囲との関係の中で受け取られ、再解釈されるプロセスが必要だとされています。

つまり、変化は
「生まれること」だけでは成立しません。

それが誰かに届き、
関係の中で扱われることで、
初めて動き出します。


発想ではなく、置かれ方が変わる

ここで見えてくるのは、
ブレイクスルーは「何を思いついたか」だけでは決まらない、ということです。

同じような問いであっても、

・ある場では受け入れられ、
・別の場では流れていく

ということが起きます。

その違いは、問いそのものよりも、
それがどこに置かれているかに関係しているようにも見えます。

早すぎる問いは、準備が整っていない関係の中で弾かれることがあります。
逆に、十分に共有される前に馴染んでしまえば、変化として立ち上がらないこともあります。

問いは単独では機能しません。
関係の中に置かれてはじめて、意味を持ち始めます。


関係の中で問いを扱うということ

Emotional Compassにおける
ブレイクスルーは、
「正解を一度手放し、問いを動かす力」として位置づけられています。

ただ、この「問いを動かす」という営みは、
必ずしも一人で完結するものではありません。

問いを差し出すこと。
違和感をそのままにしておくこと。
すぐに結論を出さず、関係の中に置き続けること。

そうした振る舞いが、
周囲とのあいだに少しずつ変化の余白をつくっていきます。

同時に、それは簡単なことでもありません。

問いは、ときに違和感を生み、
関係に揺らぎをもたらします。

受け入れられないこともあれば、
誤解されることもあります。

それでも関係の中にとどまり続けることが、
結果として変化につながる場面もあるように見えます。


個人の力として語られすぎているもの

ブレイクスルーは、
しばしば「個人の能力」として語られます。

発想力がある人。
枠を超えられる人。
新しいことを生み出せる人。

そうした見方は、わかりやすさがあります。

ただ、その背後で起きていることを見ていくと、
少し違う景色も浮かび上がります。

変化は、誰か一人の中で完結しているのではなく、
関係の中で受け取られ、変化し、広がっていくものでもあります。

その意味では、ブレイクスルーは
「個人の力」であると同時に、
「関係の中で成立する現象」として捉えることもできそうです。


その問いは、どこに置かれているのか

新しい発想を生み出すこと。
前提を問い直すこと。
違う見方を持ち込むこと。

それらはたしかに重要です。

ただ、それと同じくらい、

その問いがどこに置かれているのか。
誰とのあいだにあるのか。
どの関係の中で扱われているのか。

といったことも、
変化に影響しているのかもしれません。

変化は、ひとりでは起こせない。

そうだとすると、
いま自分が持っている問いは、
どこに置かれているのでしょうか。


参考文献

Everett M. Rogers
Diffusion of Innovations(イノベーション普及理論)
イノベーションが社会に広がるプロセスを示した研究。個人の発想だけでなく、関係やネットワークの中での受容・再解釈が重要であることを示している。


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