AI時代のレノボがEQを必須要件とする理由──リーダーに求められているのは何をどう捉え直す力なのか|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

AIが仕事の進め方そのものを変えつつある中で、
リーダーに求められる力は、どこへ移っているのでしょうか。

Forbes JAPAN 最新記事に掲載された
「AI時代のレノボが『EQ(感情的知性)』をリーダーシップの必須要件とする理由」は、
その問いを正面から扱った記事です。

この記事が興味深いのは、
EQを「性格」や「人柄」の話としてではなく、
現実のプレッシャーに結びついた行動の条件として語っている点にあります。

AIは仕事を自動化するだけではない

記事の前半で描かれているのは、
AIが単に業務を効率化する存在ではない、という現実です。

部門横断のプロジェクトが増え、
不完全な情報のまま意思決定が迫られる。
役割は曖昧になり、優先順位は一夜にして変わる。

レノボの人事担当エグゼクティブディレクターである
ファン・ジャン・リー氏は、
こうした状況を「混乱、不確実性、曖昧さが非常に明白な状態」だと表現しています。

ここで重要なのは、
この環境が感情的な負荷を高める形で仕事を再構築しているという点です。
AI時代の難しさは、タスクの複雑さだけではありません。
判断の前提が、安定しなくなっている。

EQは「理論」ではなく「反応を止めるための条件」

レノボにおいて、EQは抽象的な能力として語られていません。
記事では、EQが具体的な行動として定義されています。

プレッシャー下での自己認識。
意見が対立したときの共感。
計画が変更される際の感情調整。

これらはすべて、
「人に優しくするため」のスキルではありません。

リー氏が強調しているのは、
リーダーが反応してしまわないための条件としてのEQです。
自分自身をうまく管理できなければ、
考える前に反応し始めてしまう。

ここでEQは、
人間関係を円滑にするための付加価値ではなく、
判断を続けるための前提条件として位置づけられています。

リーダーの仕事は「決めること」から変わりつつある

記事では、リーダーの階層ごとに求められるEQの焦点が整理されています。

第一線のリーダーは、
「仕事をする人」から「人を率いる人」への移行に直面する。
ミドルマネージャーは、
権限を持たないまま部門間を整合させなければならない。
シニアリーダーは、
心理的安全性を確保し、
人々がリスクを取り、互いに挑戦できる環境をつくる役割を担う。

共通しているのは、
どの役割においても、
正解を知っていることがリーダーの条件ではなくなっているという点です。

むしろ問われているのは、
状況が崩れたときに、
どのように立ち止まり、
どのように次の見方を立ち上げるか。

EQの核心は「感情」ではなく「捉え直し」にあるのではないか

この記事を通して浮かび上がってくるEQは、
感情をポジティブに保つ力ではありません。

混乱やフラストレーションが生じたときに、
その感情に飲み込まれるのではなく、
いま何が起きているのかを捉え直す余地を残すこと

リーダーの感情はチームに伝播します。
だからこそ、
一歩引いて振り返り、
別の見方を探す。
その短い停止が、
再び判断と行動を可能にする。

AI時代において、
リーダーの仕事は
「答えを出すこと」から、
前提を更新し続けることへと移りつつあるように見えます。

Emotional Compassで言う「リフレーミング力」

Emotional Compassでは、
こうした力を リフレーミング力 と呼んでいます。

リフレーミング力とは、
状況を前向きに解釈する技術ではありません。
感情や違和感を手がかりに、
判断が可能な見方へと捉え直す力です。

Forbes JAPANの記事が描いているEQの姿は、
このリフレーミング力と重なって見えます。

https://innershift.jp/twentyfour-traits/trait_14/

感情を扱うこと自体が目的なのではなく、
捉え方を更新し続けるために感情を使う。
その姿勢が、AI時代のリーダーシップの
一つの輪郭を示しているのかもしれません。

終わりに

AI時代において、
リーダーに求められているのは、
より優しくなることでも、
より強くなることでもないのかもしれません。

混乱や不確実性の中で、
反応する前に立ち止まり、
別の見方を探し続けること。

レノボの事例は、
EQという言葉の内側に、
そうした役割の変化が含まれている可能性を示しています。

この読み方が、
すべての組織に当てはまるわけではありません。
ただ、AIが答えを出す時代に、
人間のリーダーが何を担おうとしているのかを考えるための、
一つの参照点にはなるでしょう。


参考記事

Forbes JAPAN/
「AI時代のレノボが『EQ(感情的知性)』をリーダーシップの必須要件とする理由」/
Kevin Kruse/
https://forbesjapan.com/articles/detail/90806

INNERSHIFTからのお知らせ

INNERSHIFTでは、
感情と意思決定、対話、リーダーシップの関係を
Emotional Compass を通じて探究しています。

本記事で扱ったリフレーミング力は、
不確実な状況の中で、
判断が止まらないための重要な感情特性のひとつです。

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