朝、同じ道を歩きながら、ふと昨日と違う景色に気づく瞬間があります。昨日と同じように見える日々の中にも、わずかな変化が潜んでいる。その変化を受けとめ、自分に問いを立て直す。リーダーの成長とは、その小さな問いを積み重ねる歩みのことかもしれません。
「誠実性」とは、考えを胸の中に閉じこめず、違いを恐れずに関わり続ける力です。それは“正しさを主張する”のではなく、“関係を深めるために語る”姿勢のこと。Emotional Compassでは、本特性は関係管理(RM)因子に属します。対話を手放さず、敬意をもって関わり続けることが、信頼の礎を築いていきます。
違いを恐れず、関わり続ける勇気
意見の違う相手と話すとき、胸の奥が少し固くなる瞬間があります。相手を否定したいわけではないのに、思いがすれ違い、言葉が尖ってしまう。そんなとき、私たちはつい「距離をとる」という選択をしてしまいがちです。しかし、誠実さとは、違いから目を背けない勇気のことかもしれません。すぐに答えが出なくても、「わからないけれど、聞いてみよう」と留まる姿勢――そこにリーダーとしての成熟が宿ります。
誠実であるとは、正しさを主張することではなく、関係を手放さないことです。価値観の異なる相手と関わり続けるには、忍耐と敬意が必要です。自分の信念を曲げずに、なお相手を理解しようとする姿勢。それは、短期的な成果よりも長期的な信頼を重んじるリーダーにしか育てられない力です。誠実さは「善良さ」ではなく、「持続的な対話を支える知性」なのです。
「真摯な関わり」が生む信頼──Rogersの示したCongruence
カール・ロジャーズ(Rogers, 1961)は著書『人間らしくなるために(On Becoming a Person)』の中で、「真摯な関わり(Congruence)」という概念を示しました。彼は、相手に向き合う際に最も大切なのは「偽らず、本音で存在すること」だと述べています。ロジャーズにとって誠実さとは、完璧な正しさを装うことではなく、自分の感情や限界を認めながら、他者と向き合い続けること。つまり、“相手の中に留まる勇気”こそが真摯な関わりの核でした。これはリーダーシップにおいても同じです。部下や仲間との関係で意見が食い違っても、関係を断つことなく対話を続ける――その積み重ねが、信頼という土台を育てていきます。
「正しさ」よりも「つながり」を選ぶ
私たちはしばしば、「誠実=正直であること」と考えがちです。しかし、真の誠実さは、ただ率直に言うことではなく、「どのように相手と関わり続けるか」という関係性の態度にあります。相手の考えに異議を唱えるときでも、相手の尊厳を守ることができるか。沈黙や断絶ではなく、対話を選び取る勇気があるか。誠実さとは、価値観の違いを恐れずに関わり続ける力であり、組織の信頼をつなぎ止める見えない糸なのです。
関係を手放さない誠実さ──組織を支える見えない力
最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社)では、「違いを受け入れながら関係を続けることが、組織を支える基盤になる」と語られています。経営における誠実さとは、相手の立場を理解しようとする不断の努力であり、「相手を変える前に、自分が聴く」姿勢です。この“関係を手放さない誠実さ”が、リーダーとフォロワーを結ぶ信頼の源泉になります。対話を続けること自体が、組織の幸福を形づくる営みなのです。
対話をやめない勇気が、信頼をつくる
誠実さの核心は、結果よりもプロセスにあります。相手を説得できたかどうかよりも、関わりを続けることに価値がある。どんなに意見が異なっても、「この人とは話し続けたい」と思える関係を築けるか――それが、リーダーの真価を問う場面です。誠実さとは、正解を示す力ではなく、関係をつなぐ力。対話をやめない勇気なのです。
あなたは、どんな“違い”と誠実に関わり続けていますか?意見の食い違いの中にこそ、信頼の芽は育ちます。対話を手放さない姿勢が、リーダーとしてのあなたを形づくっていくのです。
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📚 参考文献
- Rogers, C.(1961)『人間らしくなるために(On Becoming a Person)』
- 最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社)
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