感情を抑えることと、感情を整えることは違います。怒りや不安を感じた瞬間に、その感情を“観る側”に立てるかどうか。その一瞬の切り替えが、リーダーの成熟を分けます。
感情俯瞰力とは、感情を押さえ込むのではなく、距離を取りながら理解する力です。Emotional Compassにおいて、この力は 自己認識(Self-Recognition) 因子に位置づけられます。自分の内側で起こっている感情の動きを見つめ、それを整理し、言葉と判断に反映させる。この静かな観察力が、リーダーの内的安定を生み、周囲に信頼の空気を広げていくのです。
Emotional Compassでは、本特性は自己管理(SM)因子に属します。
感情との距離が思考の余白をつくる
感情を「敵」にすると、私たちはそれに反応してしまいます。しかし、「観察対象」として見つめ直すとき、そこに新しい選択肢が生まれます。たとえば、怒りの中にある「大切にしたいもの」や、不安の奥にある「守りたい価値」。感情俯瞰力とは、感情の奥にある“意図”を見出す知性なのです。
心理学者ジョン・カバットジン(Kabat-Zinn, 1994)は、「感情を手放すのではなく、その存在を受け入れることが心の静けさを生む」と述べました。この“受け入れる観察”こそが、リーダーが自らを整える第一歩です。
静けさは信頼を生む
最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社)|https://amzn.to/4n7WstO は、「リーダーの静けさが、組織の信頼をつくる」と説いています。感情を俯瞰できる人は、場の感情に巻き込まれず、むしろその安定を保つ存在になります。リーダーの静けさとは、感情を抑える力ではなく、他者に安心を与える“場の安定力”なのです。
静けさを取り戻す3秒間
感情が動いた瞬間に、ただ3秒だけ呼吸を観察してみてください。「いま、何を感じているのか」「何が自分を動かしたのか」。そのわずかな間に、感情の波は少し静まります。書き出すのでも、数えるのでも構いません。その3秒が、反応から選択への切り替えを生みます。
観る力が、成熟のはじまり
感情俯瞰力とは、感情を支配する力ではなく、感情と共に在る力。静けさの中にこそ、リーダーの成熟が宿ります。次に感情が動いたとき、あなたはその感情をどのように“観る”でしょうか。その一瞬の「観る」という選択が、リーダーとしての深さを育てていくのです。
📚 参考文献
- Kabat-Zinn, J. (1994). Wherever You Go, There You Are: Mindfulness Meditation in Everyday Life.
- 最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社)|https://amzn.to/4n7WstO
- 最上雄太(2022)『シェアド・リーダーシップ入門』(国際文献社)|https://amzn.to/3IqOixG
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