沈黙が教えてくれること
「聞いているのに、伝わらない」。そんな瞬間に、あなたはどんな沈黙を経験したでしょうか。相手の言葉を受け止めようとしても、思いはすれ違い、心の温度が合わない。この小さなズレは、対話における最も深い課題のひとつです。
傾聴力とは、言葉を処理する力ではなく、相手の存在をそのまま受け止める力。話の内容を理解するだけでなく、その背後にある「思い」を感じ取ること。Emotional Compassでは、この力を関係管理(Relationship Management/RM)の中心に位置づけます。リーダーにとって「聴く」とは、関係を修復する行為ではなく、信頼を育てる行為なのです。
Emotional Compassでは、本特性は社会的認識(SO)因子に属します。
聴くという余白:沈黙を信じる勇気
私たちは、沈黙を恐れる傾向があります。すぐに答えなければ、気まずさが生まれると感じてしまう。けれど、沈黙こそが相手の内面が形になる時間です。急いで埋めようとせず、その沈黙を尊重すること――それが成熟した聴き方の第一歩です。
心理学者カール・ロジャース(Rogers, 1957)は、人が本当に変わるのは「評価されない聴かれ方」をされたときだと述べました。理解を急がず、受け止めながら待つ。この姿勢こそ、傾聴の本質です。沈黙を恐れず、信じて待てるリーダーのもとで、人は安心して心を開き始めます。
対話の場を耕す:思考より共鳴へ
イギリスの思想家ナンシー・クライン(Kline, 1999)は『Time to Think』の中で、「誰かが本当に聴いてくれているとき、人は最もよく考えられる」と語りました。傾聴とは、相手に思考の余白を与える行為。助言でも指導でもなく、相手の思考を支える空間づくりなのです。
リーダーに求められるのは、相手を動かす話し方よりも、相手が動き出す聴き方。会議での発言を引き出す沈黙、1on1での相づち、その一つひとつが「あなたを信じている」というメッセージになります。傾聴力は、対話を通じて関係を耕すリーダーシップです。
聴くことで関係が生まれる
最上雄太(2022)『シェアド・リーダーシップ入門』(https://amzn.to/3IqOixG)では、共感を「分かち合いの知性」として定義しています。聴くとは、相手の世界に入り込みながらも、自分の輪郭を保つ行為です。相手の感情を引き受けすぎることなく、その存在をまるごと尊重する。その絶妙な距離感が、関係を育てる“共鳴の知性”なのです。
聴くという行為は、単なる理解ではありません。それは、「私はあなたを大切に思っている」という静かな宣言。傾聴力の高いリーダーは、言葉ではなく在り方で信頼を築いていきます。
結び:あなたは誰の言葉を、本当に聴いていますか
傾聴とは、理解を超えた関係の創造です。相手の言葉の背後にある想いを感じ、沈黙の中に信頼を見出す力。次に誰かと話すとき、その人の“間”に耳を澄ませてみてください。聴くという行為の中に、リーダーとしての温度が現れます。
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