意図を分かち合う力──信頼を育てる透明な対話|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

「透明な対話」とは、率直さと誠実さをもって相手に向き合うこと。理解されるためではなく、信頼を築くために語る姿勢のことです。

Emotional Compassでは、本特性は関係管理(RM)因子に属します。

伝えたつもりなのに伝わっていない。誤解を避けようと説明を重ねるほど、かえって距離が生まれることがあります。言葉を尽くしても想いが届かない――そのもどかしさの裏には、「何を伝えたいか」よりも「なぜ伝えたいか」が見えなくなる瞬間があります。

意図共有力とは、相手を操作するための説明力ではなく、関係を深めるための誠実な開示力です。
Emotional Compassにおいて、この力は関係管理(Relationship Management)に位置づけられ、共感・傾聴・行動・信頼を経て関係を成熟へ導く最後の知性とされます。


率直さが信頼をつくる

私たちは、誤解を恐れるあまり言葉を控えることがあります。
しかし、沈黙は時に不安を生み、相手に“拒絶”として受け取られてしまうこともある。

本当の信頼は、すべてを分かり合うことではなく、わからなさを共有することから生まれます。
「私はこう感じている」「こう考えて動こうとしている」――その率直さこそが、関係の透明性を高める最初の一歩なのです。


心理的安全性という土台

エイミー・C・エドモンドソン(2019)『恐れのない組織(The Fearless Organization)』では、心理的安全性を「率直に話せる勇気と、受け入れられる安心の両立」として述べています。

チームが健全に機能するためには、発言できる勇気と、聴く側の寛容さが同時に存在しなければならない。リーダーの意図共有は、その“両輪”を動かす行為です。

完璧な説明ではなく、誠実な未完成の言葉が、むしろ信頼を強くする。
率直さが安心を生み、安心が再び率直さを呼び起こす――そこに関係の循環が生まれます。


信頼の通貨を増やすリーダーシップ

最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社)では、「誠実な意図の共有が、信頼の通貨を生む」と述べています。

信頼は一方的に“与える”ものではなく、言葉と行動の往復で“育てる”もの。
リーダーが自らの意図を開示することは、メンバーに対して「あなたを信じている」というメッセージを示す行為です。

そこには、操作ではなく、対等な関係に立つ勇気が宿っています。


透明な対話が、未来を動かす

関係の成熟とは、誤解のない完璧な一致ではありません。
それは、意図を分かち合いながら、違いを受け止め続けるプロセスです。

意図共有力とは、正しさを押しつける力ではなく、相手の中に“理解したい”という信頼を生む力。
透明な対話を恐れずに重ねるとき、関係は深まり、チームはしなやかに動き始めます。


今日、誰に意図を伝えますか?

意図を共有することは勇気のいる行為です。
けれど、それは同時に、相手を信頼する表現でもあります。

今日、あなたは誰に、自分の意図を率直に伝えてみますか。
その一言が、関係をもう一歩深めるきっかけになるかもしれません。



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