リフレーミング力──出来事の意味を変える知性 | INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

思い通りにいかない一日がある。
努力が報われず、言葉が届かず、空回りしたように感じる日。
そんなとき、私たちは「うまくいかなかった」という一点に心を縛られてしまう。
けれど、もしそれを“終わり”ではなく“始まり”と見ることができたら、何が変わるだろうか。

Emotional Compassでは、本特性は自己認識(SA)因子に属します。


意味を変えるというリーダーの柔軟さ

リフレーミングとは、「枠組みを変える」という意味の心理学的概念です。
出来事そのものを変えられなくても、それをどう解釈するかは選ぶことができる。
リーダーシップの本質は、この“意味の選び方”にあります。

たとえば失敗を「終わったこと」と見るか、「次の道を見つけるための材料」と見るか。
同じ出来事でも、その捉え方ひとつで行動のエネルギーは大きく変わる。
リーダーはその意味を変える力で、チームの視点を未来へと導きます。


視点を変えることで、現実が変わる

心理学者ポール・ワッツラウィックら(1974)は、『変化の原理(Change: Principles of Problem Formation and Problem Resolution)』の中で、「問題とは出来事そのものではなく、出来事の“意味づけの枠”によって生まれる」と述べています。
つまり、出来事は常に中立であり、私たちの認識がそれを“問題”にも“可能性”にも変えているのです。

リーダーが新しい視点を提示することは、単なるポジティブ思考ではありません。
それは、現実をねじ曲げるのではなく、「別の側面を見る勇気」です。
事実を否定せず、意味を再定義することによって、
チームは「できない理由」から「できる方法」へと動き出していく。


「痛みの意味を変える」という成熟

最上雄太(2025)『人を幸せにする経営』(国際文献社)では、
「出来事の意味を変える力が、組織の再生を支える」と述べています。
リーダーは、失敗や痛みを“避ける”のではなく、“意味を与える”存在です。
「この経験があったからこそ、次に進める」と言える力は、
痛みを消すのではなく、それを未来に変換する知性の表れです。

リフレーミングとは、希望をつくり直すこと。
それは、現実を軽くする技術ではなく、現実と新しい関係を結ぶ力です。


視点の転換が、関係と組織を変える

出来事の意味が変わると、人の関係性も変わります。
「誰のせいか」を問う場から、「次に何を学べるか」を問う場へ。
この転換が、信頼と協働の土台を育てます。

リーダーは、チームに対して“別の見方”を提案する鏡のような存在です。
冷静さと温かさの両方をもって、
「同じ出来事を、違う意味で見よう」と語りかけるとき、
組織には静かな前進の風が生まれます。


あなたが意味を変えられる出来事は何ですか

リフレーミングとは、“出来事を変える”のではなく、“出来事との関係を変える”こと。
困難の中に学びを見出し、失敗の中に希望を見いだす。
その一歩が、リーダーとしての成熟を形づくります。

今日、あなたが意味を変えられる出来事は何でしょうか。
その問いこそが、新しい可能性の始まりです。


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