「自分らしさ」という言葉は、自己啓発の文脈で頻繁に使われますが、実はとても扱いの難しいテーマです。なぜなら、“らしさ”とは、他者との関係性の中で揺れ動くものだからです。
多くの人が「自分らしくない」と感じるのは、自分の行動が心の奥底の意図とズレているときです。たとえば、誰かに合わせて無理に振る舞ったとき。本当は疑問を感じていたのに、周囲の空気を読んで黙ってしまったとき。あるいは、やりたいと思っていたことを「大人だから」と引っ込めたとき。こうしたズレは、ほんのわずかかもしれません。けれど、その違和感は、あなたの中に確かに残ります。
経営学の世界でも、個人の意思決定における“内的一貫性”は大きなテーマです。実際、リーダーが「自分らしくない選択」を繰り返していくと、信頼や動機づけが弱まるという研究もあります。つまり、「自分らしさ」を保つことは、パフォーマンスだけでなく、組織やチームとの関係性にも影響を与えるのです。
だからこそ、ふとしたときに「今の私は私だったか?」と問い直すことは、とても重要です。この問いは、行動を反省するためのものではなく、むしろ、自分の深層に触れる扉のようなもの。一見ささやかで、でも確かに、自分との対話を促すきっかけになります。
あなたが“自分らしくない”と感じるのは、どんなときですか?
その違和感の中にこそ、あなたが大切にしているものが、静かに息づいているのかもしれません。
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