共感は、生成できるのか──AI時代に問われる共感的行動とは|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

共感らしさは、つくれるようになった

生成AIは、慰めの言葉を即座に出力します。
感情分析AIは、表情や声の揺れから気分を推定します。

「それは大変でしたね」
「お気持ちお察しします」

そうした言葉は、以前よりも滑らかに、自然に、整った形で生成されるようになりました。

では、共感は、生成できるのでしょうか。

あるいは、私たちが「共感」と呼んでいるものの中に、
生成できる部分と、できない部分があるのでしょうか。

共感は、感情で終わらない

社会心理学者の Daniel Batson は、
**Empathic Concern(共感的関心)**という概念を提示しました。

これは、
他者の苦痛や困難に直面したときに生じる、思いやりや配慮の感情を指します。

Batsonの研究では、共感的関心が高い参加者は、
援助行動を選択する割合が有意に高いことが示されました
Journal of Personality and Social Psychology 掲載研究)。

しかし、同時にもう一つの事実も報告されています。

援助にかかるコストが高くなると、
その行動率は下がる。

つまり、
共感の感情が生まれることと、
実際に行動に移すことのあいだには、
ひとつの判断が存在しています。

共感は自然に生じることがある。
けれど、行動には決断が伴う。

行動に変わるとき、何が起きているのか

Emotional Compassの24特性の一つ、
共感的行動(trait_09)は、次のように定義されています。

相手の気持ちに共感するだけでなく、それを行動で表す力。そっと声をかける、寄り添う、手を貸す——共感を“かたち”にする力です。
https://innershift.jp/twentyfour-traits/trait_09/

ここで扱われているのは、
感じる力そのものではありません。

それを「かたち」にする力です。

時間を使う。
立場を使う。
ときには、自分の評価やリスクを引き受ける。

共感的行動とは、
感情の発生ではなく、
コストを伴う選択の問題でもあります。

Batsonの研究が示すように、
コストが上がると行動は減少する。

つまり、
共感が足りないから動かないのではなく、
引き受けるものが大きいとき、私たちは立ち止まる。

AIは、どこまで担えるのか

感情を扱う技術の分野には、
**Affective Computing(感情コンピューティング)**があります。

この領域を切り拓いたのが、
Rosalind Picard です。

AIは、
表情、音声、言語パターンから感情を推定できます。
最適な応答を生成することも可能です。

しかし、
そこにはコストの引き受けがありません。

AIは、
時間を差し出しません。
立場を賭けません。
評価を揺らしません。

共感らしい言葉を生成することと、
関係に責任を持って関わることは、同じではありません。

リーダーシップと、引き受けるということ

リーダーシップは、
判断だけでなく、関係を扱う営みです。

部下が落ち込んでいるとき、
メンバーが孤立しているとき、
対立が起きているとき。

状況を理解することと、
そこに自分が関わることは別の次元にあります。

共感的行動は、
理解を示すこと以上に、
その場にとどまり、関わり続ける姿勢を含みます。

AIは、補助することはできるでしょう。
気づきを促すこともできるかもしれません。

けれど、
関係の中で何を引き受けるかを決めるのは、
依然として人間の側にあります。

共感は、どこで決断になるのか

共感は、感情で始まるかもしれません。

しかし、それが行動に変わる瞬間、
そこには小さな決断があります。

時間を使うか。
関係に踏み込むか。
自分の余裕を差し出すか。

AI時代において、
「感じる」ことの価値は変わるかもしれません。

けれど、
「動く」ことの重さは、簡単には置き換えられない。

共感を生成することは、可能かもしれない。

では、
共感を引き受けることは、どうでしょうか。


参考文献


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