リーダーは迷いの中で決めている──倫理のリーダーの判断の瞬間|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

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正しいか、正しくないか。

倫理という言葉を聞くと、
私たちはつい、そのように明確な判断を思い浮かべます。

ルールに従う。
正しい選択をする。
間違いを避ける。

けれど、実際の現場では、
それほどはっきりと割り切れる場面ばかりではありません。

どちらも完全には正しくない。
それでも、決めなければならない。

そうした瞬間に、リーダーは何を頼りに判断しているのでしょうか。


正しさだけでは、決めきれないとき

たとえば、

誰かを守るために、別の誰かに負担がかかるとき。
短期的な成果と、長期的な信頼が衝突するとき。

どちらにも理由があり、
どちらにもリスクがあります。

このような場面では、
「正しい答え」を探そうとすればするほど、
判断は動かなくなります。

正しさは、判断の材料にはなりますが、
それだけでは決定には至らないことがあります。


判断の瞬間に起きていること

では、実際に決断が下される瞬間には、何が起きているのでしょうか。

その場の空気。
関係性。
これまでの経験。
そして、言葉にしきれない違和感。

さまざまな要素が重なり合いながら、
判断はその場で形になっていきます。

整った前提が揃ってから決める、というよりも、
揺れた状態のまま、どこかで線を引く。

倫理的な判断とは、
そのようなプロセスの中で行われているのかもしれません。


研究が示す「その場での判断」

倫理的意思決定についての研究でも、
同様のことが示されています。

Treviño, L. K.(1986)は、倫理的判断が
個人の特性だけでなく、状況や組織文脈との相互作用の中で生まれることを示しました。

さらにReynolds, S. J. の研究では、
倫理的な判断の多くが、熟慮された結論としてではなく、
その場での認知や直感的な処理として行われていることが指摘されています。

私たちは、まず感じ、
そのあとで理由をつくることがある。

倫理的判断もまた、
整った論理だけで支えられているわけではありません。


揺れたまま、決める

こうして見ていくと、
倫理的なリーダーとは、

常に迷いのない人、
正解を即座に導ける人、

というよりも、

揺れながらも、その中で決めていく人、
とも言えるかもしれません。

不安や葛藤が消えるわけではない。
それでも、その状態のまま、
どこかで判断を引き受ける。

その積み重ねが、
周囲からの信頼や安心感につながっていきます。


迷いを避けないという選択

迷いは、判断を遅らせるものとして扱われがちです。

できるだけ早く結論を出す。
揺れをなくす。

そうした姿勢も、状況によっては必要です。

ただ、迷いそのものを排除してしまうと、
見えなくなるものもあります。

違和感。
小さな兆し。
まだ言葉になっていない気配。

そうしたものは、
揺れの中に現れます。


倫理とは、判断の「きれいさ」ではなく

倫理的リーダーシップは、
常に正しい判断を積み重ねることではありません。

また、迷いのない状態で決断することでもありません。

揺れを抱えたまま、
その場で引き受けていくこと。

そのプロセスの中に、
倫理という側面が現れているのかもしれません。

(倫理のリーダーについての詳細はこちら
https://innershift.jp/emotional-compass/compass-sec4/ethical-leader/)


参考文献

Treviño, L. K.(1986)
Ethical Decision Making in Organizations

Reynolds, S. J.
A Neurocognitive Model of the Ethical Decision-Making Process


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