リーダーに求められる質問力とは──対話とEQ(感情知性)の関係|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

リーダーに求められる質問力とは、
答えを引き出す巧さのことなのでしょうか。
それとも、対話そのものを成立させる力なのでしょうか。


情報は集まっているのに、対話にならない

多くのリーダーは、日常的に質問をしています。
状況を確認し、課題を洗い出し、判断の材料を集めるためです。

しかし、問いが「情報を取りにいくもの」になった瞬間、
対話はどこかで止まりやすくなります。

答えは返ってくる。
けれど、その人が何を感じているのか、
どこで引っかかっているのかまでは、見えてこない。

問いが向いている先が、
事実や結果だけに限定されているとき、
関係の層には触れられないまま進んでしまいます。


場の空気が変わる瞬間に起きていること

一方で、
会話の流れがふと変わる瞬間もあります。

誰かが言葉を選びながら話し始め、
それに対して、すぐに評価や結論が返されない。

沈黙が少し続き、
そのまま対話が続いていく。

こうした場面では、
問いは答えを引き出すためというより、
関係を開いたままにするために使われています。

問いの内容以上に、
「どこに立って、誰に向けて投げかけられているか」が、
対話の質を左右しているように見えます。


EQ(感情知性)は、関係の中で立ち上がる

ここまで見てきた感情の動き方は、
EQ(感情知性)の研究でも繰り返し論じられてきました。

EQ研究の第一人者である ダニエル・ゴールマン は、
感情知性を、個人の内面に閉じた能力としてではなく、
リーダーと周囲の関係性の中で広がり、影響し合うものとして捉えています。

リーダーの感情のあり方は、
本人の内側に留まるのではなく、
チームの雰囲気や安心感、
さらには思考や判断の質にまで波及していく。

つまり、
リーダーのEQとは、
「自分をうまくコントロールできているか」
という問いだけで測れるものではありません。

どんな対話の場を生み出しているか。
そこに、EQの輪郭が現れてくる、ということです。


問いは、相手を動かすためのものではない

問いについても、同じ視点が当てはまります。

組織心理学者の エドガー・H・シャイン は、
問いを、情報を引き出すための技術ではなく、
関係のあり方そのものを形づくる行為として捉えました。

シャインが注目したのは、
問いの巧みさではありません。

その問いが、
相手を評価しようとしているのか。
それとも、同じ場所に立とうとしているのか。

問いが、
相手を動かすためのものになった瞬間、
対話は閉じやすくなる。

一方で、
答えを急がず、
相手が感じていることに触れようとする問いは、
関係を少しずつ開いていきます。

ここで問われているのは、
質問力というスキルよりも、
問いを通じた関係のつくり方なのだと思います。


対話が続く組織に残るもの

感情知性も、問いも、
しばしば「身につけるもの」として語られます。

けれど、
ゴールマンやシャインの議論を重ねてみると、
それらはむしろ、
関係の中で、結果として立ち上がってくるもの
として見えてきます。

対話が続いている組織では、
すぐに答えが出ない問いが、
宙に浮いたまま共有されていることがあります。

それは、未解決の問題というより、
関係の中で抱え続けられている問いです。

リーダーの問いは、
相手を前に進めるためのものではなく、
対話を、もう少しそこに留めるためのものなのかもしれません。

その積み重ねの中で、
EQ(感情知性)と呼ばれてきたものも、
少しずつ、形を持ちはじめる──
そんなふうにも、読み取れそうです。


参考文献


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