レジリエンスは、「立ち直る力」として語られることが多くあります。
困難に直面しても折れず、崩れても元の状態に戻る。そうしたイメージが一般的です。
たしかに、そのような側面はあります。
ただ、それだけでは捉えきれない場面もあります。
元の状態には戻っていないのに、前に進んでいる。
以前とは違うあり方になっているのに、続いている。
そうした変化を前にすると、「回復」という言葉だけでは少し足りないようにも感じられます。
ここでは、レジリエンスを単なる回復力としてではなく、
どのような特徴として現れ、どのような構造で成り立っているのかという観点から捉え直していきます。
レジリエンスはどのように見えているのか
レジリエンスという言葉から思い浮かぶのは、いくつかの特徴です。
困難に直面しても、完全には折れないこと。
一時的に崩れても、再び立ち上がること。
状況が不安定でも、関わり続けること。
こうした振る舞いは、外から見たときに「強さ」として認識されます。
変化に耐え、状態を保ち続けているように見えるからです。
ただ、この見え方は、あくまで結果として現れているものでもあります。
その背後で何が起きているのかまでは、必ずしも含んでいません。
「回復」という理解では捉えきれないもの
レジリエンスを回復力として捉えるとき、
そこには「元に戻る」という前提が含まれています。
しかし、実際には同じ状態に戻るわけではないこともあります。
経験を経て、感じ方や捉え方が変わり、以前とは違う状態で関わり続けている。
この点について、Mastenはレジリエンスを特別な能力ではなく、
日常的な適応のプロセスとして捉えています。
つまり、レジリエンスは「強い人だけが持つ力」ではなく、
状況に応じて変化しながら関わり続ける、より普遍的な働きとして見ることができます。
戻るのではなく、変わりながら続く
では、その適応のプロセスでは何が起きているのでしょうか。
Bonannoは、困難への反応が単一の回復パターンに限られないことを示しています。
人は、元に戻るだけでなく、そのまま安定したり、揺れながら適応したりと、複数の形で関わり続けます。
ここで見えてくるのは、「戻る」というよりも、
状態を変えながら続いているという姿です。
レジリエンスは、ある一点に戻る力ではなく、
状況に応じてあり方を組み替えながら関わり続ける動きとして現れます。
何が変わっているのか
その変化は、どこで起きているのでしょうか。
ひとつの手がかりは、出来事の意味づけにあります。
同じ出来事であっても、その捉え方によって、そこからの関わり方は変わります。
Grossが示すように、人は出来事そのものではなく、
その意味の捉え方を通じて感情や行動を調整しています。
つまり、外側の状況が変わらなくても、
内側での意味づけが変わることで、関わり方が変わっていきます。
レジリエンスの一部は、このような意味の更新の中で起きています。
変化を含んだまま進んでいく
さらに、困難な経験をきっかけに、
以前とは異なる価値観や関係性が生まれることもあります。
TedeschiとCalhounが示すように、
そうした変化は単なる回復とは異なる形で現れます。
ここでは、元に戻るのではなく、
経験を含んだまま別のあり方へと移行していく動きが見られます。
レジリエンスは、このような変化を排除するのではなく、
むしろ含みながら続いていくプロセスでもあります。
強さとしてのレジリエンスの限界
一方で、レジリエンスが「強さ」として語られるとき、
別の側面も見えてきます。
どのような状況でも折れないことが求められると、
それは個人への負担として働くこともあります。
また、困難の背景にある構造的な問題が見えにくくなることもあります。
レジリエンスは重要な働きである一方で、
それを単純な強さとして捉えると、見落とされるものも出てきます。
レジリエンスをどう捉えるか
ここまでを踏まえると、レジリエンスは単なる回復力としてではなく、
いくつかの特徴と、その背後にある構造の両方から捉える必要があります。
外からは、折れずに続いているように見える。
けれど、その内側では、意味が更新され、状態が組み替えられ、
変化を含んだまま関わりが続いている。
レジリエンスとは、回復する力というよりも、
状況に応じて意味を更新しながら、あり方を変え続けるプロセスとして見ることもできます。
レジリエンス・リーダーに起きていること
こうした視点から見ると、レジリエンス・リーダーの在り方も、少し違って見えてきます。
困難に直面しても折れない人というよりも、
変化を含んだまま関わり続けられる人。
元に戻ることを目指すのではなく、
そのときの状況に応じて意味を更新し、
関係や判断を組み替えていく。
そのプロセスの中で、結果として「折れない」ように見える状態が生まれているのかもしれません。
終わりに
レジリエンスは、元に戻ることなのでしょうか。
それとも、変わりながら続いていくことなのでしょうか。
どちらか一方で捉えることは難しいかもしれません。
ただ、「回復」という言葉から少し離れて見てみると、
その中で起きている動きは、もう少し違ったものとして見えてきます。
■ 参考文献
Masten, A. S.
Ordinary Magic
Bonanno, G. A.
Loss, Trauma, and Human Resilience
Gross, J. J.
Emotion Regulation
Tedeschi, R. G., & Calhoun, L. G.
Posttraumatic Growth
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