AIは判断を助けるが、責任は引き受けない― リーダーシップが感情に回帰する構造|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

生成AIの進化は、リーダーの仕事を確実に変えつつあります。
情報収集は速くなり、分析は高度化し、意思決定の前提条件は、かつてないほど整えられるようになりました。

それにもかかわらず、多くのリーダーはこう感じているのではないでしょうか。

判断は助けられているはずなのに、決めることの重さは、あまり変わっていない。

本稿では、AIとリーダーシップをめぐる議論を、
生産性や効率性ではなく、**「責任」と「感情」**という視点から捉え直してみたいと思います。


生成AIは「仕事」を再編するが、「引き受ける主体」は描かれていない

AIと仕事の関係を扱う近年の研究では、
業務をタスク単位に分解し、AIがそれを補完・代替することで、人間はより付加価値の高い仕事に集中できる、といった整理がなされています。

実際、生成AIは、
情報探索、要約、選択肢の提示といった領域において、
人間の判断を強力に支援する存在になりつつあります。

ただ、ここで一つの問いが残ります。

その判断の結果を、誰が引き受けるのか。

多くのAI論は、「何ができるようになるか」を精緻に描く一方で、
「その結果に誰が責任を負うのか」については、ほとんど触れません。

判断のプロセスは分散されても、
結果に対する責任は、分散されない。

この非対称性が、AI時代のリーダーシップを、見えにくくしているように思われます。


AIは判断を高速化するが、不確実性を引き受けない

AIは、迷いません。
後悔もしません。
感情を持たないからです。

しかし、リーダーの仕事は、常に不確実性の中で行われます。

正解がない状況で決めること。
誰かを納得させられないかもしれない選択をすること。
結果として生じる影響を、引き受けること。

AIがどれほど高度になっても、
これらを肩代わりすることはありません。

その結果、私たちの職場では、
判断の合理化と、責任の集中が同時に進んでいます。

そして、その責任を引き受ける場所に、
感情が戻ってきます。


AIに焦点化するほど、リーダーは感情労働に回帰する

ここで言う「感情」とは、
単なる共感や優しさといった情緒的なものだけを指しているわけではありません。

・不安を抱えたまま決断すること
・葛藤を言葉にせず引き受けること
・関係性の緊張を自分の内側で受け止めること

これらはすべて、リーダーが担ってきた感情労働です。

AIが合理性を担うほど、
合理性では処理できないものが、人に集まってきます。

これは、「人間らしさを取り戻そう」といった精神論ではなく、
構造的な帰結だと捉えることができるでしょう。


リーダーシップとは、感情を排除することではない

従来のマネジメント論では、
感情はしばしば、判断を曇らせるノイズとして扱われてきました。

しかし、AI時代のリーダーシップは、
感情を排除することで成立するものではなさそうです。

むしろ、

・感情を抱えたまま決めること
・判断の意味を言葉にすること
・関係の中で責任を引き受け続けること

こうした営みこそが、
リーダーの中心的な役割として、あらためて浮かび上がってきています。

AIは判断を助けます。
しかし、責任は引き受けません。

その空白を埋めるのが、
人としてのリーダーシップなのだと思います。


終わりに

AIが進化しても、
リーダーの仕事が消えることはありません。

ただし、その重心は、確実に移動しています。

効率化の先で、
私たちはあらためて問われているのかもしれません。

自分は、何を引き受け続けるリーダーでありたいのか。


参考文献


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