信頼があれば、人は本当にリスクを取れるのか|リスク選好性を問い直す|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

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信頼があれば、人はより大胆になれる。

そうした語りは、リーダーシップの世界では珍しくありません。

信頼があれば本音を言える。
信頼があれば挑戦できる。
信頼があれば健全なリスクを取れる。

たしかに、それは直感的に正しそうに見えます。

しかし、本当にそうなのでしょうか。


信頼は、日々の行動で築かれる

Forbes JAPAN に掲載された記事
「信頼は一度築けば終わりではない──リーダーが日々の行動で示すべき理由」では、
信頼は抽象的な概念ではなく、日々の行動によって築かれ、損なわれるものだと説明されています。

人格への信頼。
コミュニケーションへの信頼。
能力への信頼。

信頼は、観察可能な行動の積み重ねである。

そして、信頼がある環境では、人はより早い段階で声を上げ、
より健全なリスクを取り、効果的に協働できる、と。

この構図は、とても魅力的です。

信頼があれば、挑戦できる。

しかし、ここで一つの問いが残ります。


リスクは、誰にとってのリスクなのか

「健全なリスク」とは、誰にとってのリスクでしょうか。

新規事業への投資。
組織再編。
戦略転換。

リーダーが「挑戦だ」と言うとき、
その不確実性を最も強く引き受けるのは誰でしょうか。

信頼が厚い組織ほど、
リーダーの判断は受け入れられやすくなります。

それは前進を促す力にもなります。

同時に、慎重さを弱める力にもなり得ます。

信頼は、リスクを後押しするだけではありません。

リスクの重みを見えにくくすることもあります。


安全と挑戦は、対立しない

しばしば、信頼とリスクは同じ方向に語られます。

信頼があるから挑戦できる。
信頼がないから守りに入る。

しかし実際には、
信頼があるからこそ慎重になる場面もあります。

互いに守りたい関係がある。
失いたくない成果がある。
守るべき人がいる。

そのとき、リスクを取らない判断もまた、
ひとつの選択です。

大胆さだけが、美徳とは限りません。


「リスク選好性」という特性

ここで思い出したいのが、Emotional Compassの特性である
リスク選好性です。

特性ガイドはこちら:
https://innershift.jp/twentyfour-traits/trait_22/

リスク選好性とは、
単に大胆であることではありません。

不確実性をどう捉えるか。
損失の可能性と期待される成果をどうバランスするか。

リスクを過度に避けることも、
無自覚に突き進むことも、
どちらも選好の偏りです。

信頼が厚い環境であっても、
リスク選好の傾向は個人によって異なります。

信頼は、土台をつくります。

しかし、どの方向へ踏み出すかは、
その人の不確実性への態度に委ねられています。


信頼があれば、すべてうまくいくのか

信頼があれば、挑戦できる。

その通りかもしれません。

けれども、信頼があれば、
常により多くのリスクを取るべきなのでしょうか。

リスクを取ることと、
リスクを引き受けることは、同じではありません。

リーダーの役割は、
挑戦を鼓舞することだけではなく、
その影響を見通すことでもあります。

信頼は、前提を整えます。

しかし、どのリスクを選び、どこで踏みとどまるのか。

その判断は、
信頼とは別の次元にあります。

信頼がある組織は、強い。

けれども、その強さをどの方向に使うのか。

そこに、リーダーの選好が現れます。


参考記事

Rodger Dean Duncan
「信頼は一度築けば終わりではない──リーダーが日々の行動で示すべき理由」
Forbes JAPAN(2026)


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