リーダーが「対面」を手放してはいけない理由|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

リモートワークやオンライン会議が当たり前になり、
リーダーのコミュニケーションも、効率や合理性を軸に再設計されてきました。

意思決定は速くなり、移動時間は減り、
多くのやり取りが画面越しで完結するようになった組織も少なくありません。

それでもなお、
「ここは直接会って話したほうがいい」
そう感じる場面が残り続けているのも事実ではないでしょうか。

対面で話すことが、デジタルよりも何らかの効果を持つ。
その感覚自体は、多くのリーダーが自ら体験し、理解しているのではないでしょうか。

表情の変化、沈黙の長さ、言葉にされない違和感。
画面越しでは拾いきれない何かが、対面には確かにあります。

では、その「何か」とは、いったい何なのでしょうか。


対面が果たしているのは、情報伝達以上の機能

対面の価値は、しばしば「信頼構築」や「関係づくり」と表現されます。
もちろん、それも重要な側面です。

ただ、それだけでは説明しきれない感覚も残ります。
なぜなら、対面が意味を持つのは、
関係性が不足している場面だけではないからです。

むしろ、すでに関係性があるはずの相手との間で、
話が噛み合わなくなったとき、
前提がずれていると感じたときに、
「一度、直接会って話そう」という判断が下されることが少なくありません。

こうした感覚は、経験則にとどまるものではありません。
組織コミュニケーションの分野では、
古典的な研究の中で、対面というコミュニケーション形態が果たす機能について整理されてきました。

たとえば、ダフトとレンゲルは、
コミュニケーション手段を
「どれだけ効率よく情報を伝えられるか」ではなく、
曖昧さや解釈のズレをどれだけ扱えるかという観点で捉えました。

彼らの議論では、対面でのやり取りは、
即時のフィードバックや非言語的な手がかりを同時に扱える点で、
曖昧な状況を調整する力を持つメディアとして位置づけられています。


リーダーの仕事は、「曖昧さ」を扱うことでもある

リーダーが直面する課題の多くは、
正解が明確な情報伝達ではありません。

立場の異なるメンバーの期待、
言語化されていない不安、
表に出てこない前提の違い。

こうした要素が絡み合う状況では、
「何を決めるか」以前に、
「何が起きているのか」を共有する必要があります。

そのプロセスでは、
言葉そのものよりも、
間の取り方や、反応の速さ、
沈黙にどう向き合うかが重要になることがあります。

デジタルツールは、
情報を整理し、論点を可視化するうえで非常に有効です。
しかし、曖昧さそのものを引き受け、
関係性の中で調整していく力は、
必ずしも同じようには発揮されません。


現代の実務でも起きている「対面の効きどころ」

こうした議論は、理論上の話にとどまりません。
近年の実務研究でも、
デジタル偏重がもたらす見落としが報告されています。

たとえば、
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューに掲載された
「営業担当者は『対面の価値』を軽視してはならない」という記事では、
B2Bの文脈において、
ニーズがまだ曖昧な局面ほど、対面の対話が重要になることが指摘されています。

デジタルやオンライン会議は効率的である一方、
顧客の関心や懸念が言語化されていない段階では、
深い洞察や信頼を築きにくい。
その結果、静かに競合に主導権を渡してしまう──
記事は、そうした実務上のリスクを具体的に描いています。

重要なのは、
この記事が「対面を増やせ」と主張しているわけではない点です。
対面は、
曖昧な状況を扱うための戦略的な投資として位置づけられています。

これは、
対面を「非効率だが仕方なく残すもの」と見るのではなく、
どの局面で、何を扱うために使うのかという問いに引き戻してくれます。


対面を「残す」のではなく、「どう使うか」

対面コミュニケーションは、
コストがかかり、非効率に見えることもあります。

だからこそ、
「本当に必要な場面はどこか」
「何を扱うために対面を選ぶのか」
という問いが欠かせません。

対面は万能な手段ではありません。
しかし、曖昧さや解釈のズレ、
言葉にならない違和感を扱うための場として、
いまなお固有の役割を持っています。

効率化が進むほど、
リーダーには、
その役割を意識的に選び取る姿勢が求められているのかもしれません。


終わりに

リーダーであるあなたは、
どんな局面で「対面」を選んでいるでしょうか。

それは、
情報を正確に伝えるためでしょうか。
それとも、
言葉にならない何かを扱うためでしょうか。

対面を手放すかどうかではなく、
対面で何を引き受けようとしているのか。

その問いを、
一度立ち止まって考えてみる余地があるのかもしれません。


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