リーダーシップのライフサイクル——「四季」というメタファーを手がかりに|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

リーダーシップの「ライフサイクル」という視点

リーダーシップは、固定された能力や資質として語られるよりも、
時間の中で変わっていくものとして語られることが少なくありません。

同じ人であっても、置かれている状況や関係性によって、求められる役割は変わります。
ある局面では前に引っ張る力が期待され、別の局面では立ち止まる判断が問われる。
こうした変化をひと続きの流れとして捉えようとするとき、
私たちはしばしば「ライフサイクル」という視点を用いてきました。

始まりがあり、移行があり、揺らぎや再編がある。
リーダーシップをそうした流れとして理解しようとする試みは、
決して最近になって生まれたものではありません。


四季というメタファーが示すもの

—ライフサイクルを直感的に理解する入口として

リーダーシップのライフサイクルを語る際、
とりわけ直感的に理解しやすいのが「四季」というメタファーです。

成長、停滞、回復、リセット。
四季で語られるとき、変化は異常や失敗ではなく、
自然な局面の移り変わりとして受け止められます。
いまはどこにいるのか、次に何が起きそうか。
それを説明抜きで共有できる点で、この比喩は雄弁です。

DHBRの記事でも、四季は固定された順序としてではなく、
行き来するものとして慎重に扱われています。
この点からも、四季という語りが、
単純な成長物語に回収されないよう配慮されていることがうかがえます。

ここでは、四季を「正しい比喩」と評価する必要はありません。
まずは、ライフサイクルを直感的に理解するための入口として、
このメタファーが選ばれてきた事実を、そのまま受け取っておきたいと思います。


リーダーシップのライフサイクルは、どのように考えられてきたか

リーダーシップを、時間の中で変化するものとして捉える試みは、
四季という比喩に限られたものではありません。
むしろ、異なる分野で、別の言葉を使いながら、
同じ問いが繰り返し扱われてきました。

ここでは、その中から二つの視点を取り上げます。
どちらも、ライフサイクルという発想を、
別の角度から照らし出すものです。


意味づけが変わるという視点

— ロバート・キーガン

成人発達理論で知られるキーガンは、
人の成長を「スキルや知識の増加」としてではなく、
世界をどう意味づけているか、その枠組みが変わることとして捉えました。

彼の理論では、成長とは、
これまで当たり前だと思っていた前提が揺らぎ、
新しい見え方へと再編されていくプロセスです。
その移行期には、混乱や防衛、停滞が生じることも珍しくありません。

この視点から見ると、
リーダーシップのライフサイクルとは、
役割が変わるというよりも、
何が問題として見え、何が見えなくなるかが変わる過程
として理解することもできます。

四季のメタファーが「局面の違い」を示すとすれば、
キーガンの理論は、その局面で
世界がどう立ち上がっているかに目を向けさせます。


不快さを引き受けるという視点

— ロナルド・ハイフェッツ

一方、ハイフェッツが提示した適応型リーダーシップは、
リーダーシップを「正解を示す力」とは捉えません。

彼が扱うのは、
技術的な解決では終わらない課題、
つまり、不確実性や価値の衝突を含む課題です。
そこでは、答えを急ぐことよりも、
不快さや緊張を抱えたまま向き合うプロセスが重要になります。

この視点に立つと、
ライフサイクルの移行期は、
単なる切り替えのタイミングではなく、
関係性が揺れ、期待がずれ、
簡単には整理できない時間として現れます。

四季という語りが「切り替え」を想起させる一方で、
ハイフェッツの理論は、
切り替えの途中に生じる摩擦や停滞に光を当てています。


ライフサイクルとして捉えることの共通点

キーガンとハイフェッツの議論は、分野も文脈も異なります。
それでも、並べてみると、
いくつかの共通した視点が浮かび上がってきます。

たとえば、
変化は直線的には進まないという点。
移行期には、揺らぎや不安定さが含まれるという点。
そして、課題は個人の内側だけで完結するのではなく、
関係の再編として現れるという点です。

ライフサイクルとは、
前に進む物語というよりも、
組み替えが繰り返される物語として捉えることもできる。
そうした見え方が、ここから立ち上がってきます。


四季というメタファーを、あらためて手がかりとして眺める

このような視点を踏まえたうえで、
四季というメタファーをあらためて眺めてみると、
その射程が少し違って見えてきます。

四季は、変化を自然なものとして受け止めやすくします。
一方で、
移行期に生じる緊張や、
関係の軋み、
役割や期待のずれといった要素については、
多くを語らないままにします。

それは欠点というより、
語りの性質と言えるかもしれません。
四季は、ライフサイクルを理解するための手がかりであって、
そのすべてを語るものではないのです。


終わりに

あなたの組織で語られている「ライフサイクル」は、
何を理解しやすくしているでしょうか。

そして、その語りは、
いま起きている関係の緊張や揺らぎを、
どこまで引き受けているでしょうか。

四季というメタファーは、
リーダーシップを語るための、
ひとつの入口にすぎません。
その入口の先で、
どんな物語を選び、
どんな物語を語らずにいるのか。

その問いは、
リーダーシップそのものと同じく、
簡単には終わらないまま、
私たちの前に残り続けています。


📚 参考文献


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