よいアイデアが、なぜ組織の途中で消えてしまうのか。
この問いに対して、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー に掲載された研究は、意外な事実を示しています。
問題は、アイデアの質でも、現場の能力でもありません。
アイデアを「支持する立場」に立つこと自体が、損になりやすい構造がある。
研究者たちはこの逆説を「承認者のジレンマ(Idea Endorser’s Dilemma)」と呼びました。
この記事では、この研究を起点に、
マネジャーの内側で何が起き、組織の関係に何が残っていくのかを、INNERSHIFTの視点から捉え直します。
HBR研究が明らかにした「承認すると損をする」構造
HBRで紹介された研究は、マネジャーが部下のアイデアを支持した場合に起きる評価の変化を検証しています。
結果は明確でした。
支持したアイデアが成功した場合、称賛は主に発案者に集まります。
一方でマネジャーは、発案者に対する相対的な優位を失いやすい。
逆に、アイデアが失敗した場合は、マネジャーに向けられる責任追及のほうが強くなります。
つまり、支持という行為は、成功しても報われにくく、失敗すれば大きな代償を伴う。
この前提がある限り、「通すかどうか」の判断は、アイデアの価値だけでは決まりません。
なぜ「よい判断」が選ばれなくなるのか
この現象は、しばしば「保身」と呼ばれます。
しかし研究が示しているのは、単純な自己防衛ではありません。
承認者の内側では、次の循環が起きています。
不安が生まれる(感情)
→「支持すると損をするかもしれない」という物語が形成される(意味づけ)
→「今回は見送ろう」という結論に傾く(判断)
→支持しない、あるいは保留する(行動)
→現場は学習する。「言っても届かない」(関係)
重要なのは、これは個人の意志の弱さではなく、構造の帰結だという点です。
構造が判断の幅を狭め、結果として「正しい判断」を選びにくくしています。
承認者が本当に守っているものは何か
ここで、タイトルの問いに立ち返ります。
マネジャーが守っているのは、アイデアでしょうか。
それとも、自分の立場でしょうか。
研究結果を丁寧に読み解くと、多くの場合、守られているのは立場そのものではなく、関係の安定であることが見えてきます。
支持が損になりやすい環境では、関係が揺れるリスクを避ける選択が合理的に見えてしまうのです。
その結果、支援は減り、挑戦は減り、沈黙が組織に蓄積していきます。
承認が「一人の決断」になっていないか
承認者のジレンマが強く働く組織には、共通点があります。
それは、承認が個人に集中していることです。
承認が一人の評価や責任に紐づくほど、
その判断は「正しさ」よりも「安全性」に引き寄せられます。
逆に、承認が関係の中で共有されるほど、
支援は個人のリスクではなく、組織の選択として扱われるようになります。
ここで重要なのは、制度論や手続き論に逃げないことです。
まず問い直すべきなのは、承認がどのような関係の上に成り立っているかです。
マネジャーが守るべきものを問い直す
マネジャーが守るべきものは、
アイデアか、立場か。
あるいは、支援しても損にならない関係そのものなのかもしれません。
もし支援が報われないと感じるなら、
その判断は個人の問題ではなく、構造から生まれています。
あなたの組織で、アイデアが止まる場所はどこですか。
その場所で、守られているのは何でしょうか。
参考文献
Johnson, W., & Lucas, B. J. (2025).
Why Managers Kill Good Ideas: Overcoming the Idea Endorser’s Dilemma.
Harvard Business Review.
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/13022
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