逆境に直面したとき、
人は「強くなる」と言われます。
困難を乗り越えて、以前よりもたくましくなる。
そうしたイメージは、広く共有されています。
ただ、実際の変化を振り返ると、
少し違う感覚に気づくことがあります。
「あのときから、同じではいられなくなった」
それは、単に強くなったというよりも、
何かが変わってしまった、という感覚です。
何も変わらない人はいない
逆境は、必ず何かを揺らします。
考え方。
感じ方。
ものの見え方。
それまで当たり前だった前提が崩れ、
自分の内側にあったものが、少しずつ揺らぎはじめる。
ここで起きているのは、
「変わるかどうか」ではありません。
すでに、変化は始まっています。
違いがあるとすれば、
それがどのように進んでいくかです。
崩れることからしか、変わらない
逆境の中では、まず何かが崩れます。
うまくいくと思っていた前提。
信じていた関係。
自分のあり方そのもの。
感情も大きく揺れ動きます。
落ち込む。
不安になる。
ときには、言葉にできない感覚に包まれる。
こうした状態は、できれば避けたいものです。
けれど、この「崩れる」という過程を経ずに、
変化が起きることはほとんどありません。
そして、多くの場合、
人はそこから“元に戻る”わけではありません。
何かが組み替わり、
別の形になっていきます。
研究が示す「さまざまな回復のかたち」
レジリエンスについての研究でも、
この点は繰り返し指摘されています。
Bonanno, G. A. の研究では、
人が逆境のあとにたどる経過は一つではなく、
・比較的安定した状態を保つ
・一時的に大きく落ち込むが回復する
・長期的に影響が残る
など、複数の軌道が存在することが示されています。
また、Masten, A. S. はレジリエンスを
「特別な才能ではなく、日常的な適応のプロセス(ordinary magic)」
として捉えています。
ここから見えてくるのは、
レジリエンスが「元に戻る力」ではないということです。
人は一つのかたちに戻るのではなく、
状況に応じて変化しながら、
別のかたちをつくっていきます。
感情の「扱い方」が変わっていく
こうした変化は、感情との関わり方にも現れます。
以前であれば、強く反応していた出来事に対して、
少し距離を取って見られるようになる。
あるいは、
これまで避けていた感情に、向き合えるようになる。
ここで起きているのは、
感情が消えることではありません。
同じように揺れながらも、
その扱い方が少しずつ変わっていく。
その変化が、
次の行動や判断を支えていきます。
変わることを止めたとき
一方で、変化が止まることもあります。
何も感じないようにする。
これ以上揺れないようにする。
そうした選択は、
一時的には自分を守ることにもつながります。
ただ、その状態が続くと、
新しい形への更新は起きにくくなります。
変わらないことは、
安定ではなく、停滞に近づいていきます。
レジリエンスとは、変わり続けること
レジリエンスは、
元の状態に戻ることではありません。
また、強くなって揺れなくなることでもありません。
揺れながら、崩れながら、
その都度、別のかたちに変わっていくこと。
そのプロセスそのものが、
レジリエンスなのかもしれません。
そして、その変化は、
特別な人だけに起きるものではなく、
日常の中で、
誰にでも起きている出来事でもあります。
(レジリエンス・リーダーについての詳細はこちら
https://innershift.jp/emotional-compass/compass-sec4/resilience-leader/)
参考文献
Bonanno, G. A.
Loss, Trauma, and Human Resilience
Masten, A. S.
Ordinary Magic
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