求めても、語られない──フィードバックが消える「モノローグ組織」|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

フィードバックを求めている。
それなのに、語られない。

ハーバード・ビジネス・レビュー日本版では、従業員がみずからフィードバックを求める文化の重要性が論じられています。
「アスク・ファースト」という考え方は、勇気や率直さを個人に求めるのではなく、まず受け取る側が問いを開くことから始めようとする提案です。

この主張はもっともで、多くの組織にとって必要な視点でしょう。
けれど現場では、こうした取り組みを導入しても、なお語られない状況が残ります。

求めているのに、返ってこない。
制度もメッセージも整えているのに、沈黙が続く。

この違和感は、個人の問題ではなく、組織の構造に目を向けることで初めて輪郭を持ち始めます。


語られない理由は、勇気不足ではない

フィードバックが出ないとき、よくある説明はこうです。
率直に言うのは難しい。
関係が壊れるのが怖い。
評価への影響が気になる。

確かに、それらは一因かもしれません。
しかし多くの場合、人はもっと合理的に環境を読んでいます。

語ったあと、何が起きるのか。
その声は、どこへ行くのか。
誰が、どう意味づけるのか。

過去の経験から、その答えをすでに知っている組織では、人は語らなくなります。
語らないのは、臆病だからではありません。
語っても世界が動かないことを、学んでしまったからです。


フィードバックが消える組織には、共通した構造がある

ここで浮かび上がるのが、「モノローグ組織」という構造です。

モノローグ組織とは、対話の形式を持ちながら、実際には語りの方向と意味づけが一方向に固定されている組織を指します。

意見は集められる。
アンケートも、1on1も、振り返りもある。
けれど、判断はいつも同じ場所で行われ、語りは更新されない。

その結果、組織には奇妙な沈黙が生まれます。
話してもいいはずなのに、話す意味が感じられない。
聞かれているのに、応答されていない感覚。

フィードバックが消えるのは、拒否されたからではありません。
応答しない構造の中で、役割を終えてしまうからです。


問いを立てても、独白が続く組織

「もっと意見を言ってほしい」
「フィードバックは歓迎している」

こうしたメッセージ自体が、問題なのではありません。
問題は、その言葉が発せられる構造が変わっていないことです。

問いが投げられても、
意味づけは返ってこない。
判断の場所も動かない。

この状態では、問いは対話を生みません。
組織の独白に、個人の声が吸収されるだけです。

やがて人は、語ることをやめます。
沈黙は抵抗ではなく、適応として定着していきます。


意味づけを分かち合うとき、対話は生まれる

フィードバックが循環する組織では、意味づけが一箇所に集まりません。
問いは関係の中で往復し、判断は分散し、語りは更新され続けます。

最上雄太は『シェアド・リーダーシップ入門』の中で、リーダーシップを役割や肩書ではなく、関係の中で立ち上がるものとして捉え直しています。

それは、誰が話すかという問題ではありません。
語られた声が、どこで止まらずに動き続けるかという問題です。

モノローグを手放すとは、
意味づけの独占を手放すことでもあります。


フィードバックが消えたのではなく、関係が止まっている

フィードバックがないとき、組織は沈黙しているように見えます。
けれど実際には、語る必要がなくなっただけかもしれません。

語っても変わらない。
語らなくても関係は維持される。

そう学習した組織では、沈黙は自然な選択になります。

あなたの組織では、
声はどこで止まっているでしょうか。
問いは返ってきているでしょうか。
それとも、独白だけが積み重なっているでしょうか。

フィードバックが消えるのは、人の問題ではありません。
関係が、そこで動きを止めているというサインなのかもしれません。


参考文献


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