支配と共有──カールソン論文が示唆する「分かち合い」の条件|INNERSHIFT

シェアド・リーダーシップという言葉を聞くと、
「リーダーシップを分かち合う」
というイメージが浮かびます。一人の強いリーダーが導くのではなく、
チーム全体でリーダーシップを担っていく。

近年では、
自律型組織やフラットなチームづくりとも結びつきながら、
注目されることが増えてきました。

ただ、
ここで少し気になることがあります。

「支配」が弱くなれば、
自然に「共有」が始まるのでしょうか。

上下関係を弱めれば、
人は自然に関わり始めるのでしょうか。

現実の組織を見ていると、
そう単純ではないようにも感じます。

シェアド・リーダーシップは、自然には発生しない

Carson, Tesluk, Marrone は、
2007年の論文で、
シェアド・リーダーシップが発生する条件について研究しています。

Carson, J. B., Tesluk, P. E., & Marrone, J. A.(Carson, J. B., Tesluk, P. E., & Marrone, J. A.)
「チームにおけるシェアド・リーダーシップ──発生条件とパフォーマンスに関する研究(Shared Leadership in Teams: An Investigation of Antecedent Conditions and Performance)」
Academy of Management Journal, 50(5), 1217-1234.

https://ecampusontario.pressbooks.pub/app/uploads/sites/3344/2024/01/Leadership-in-team_antecedent-condtions.pdf

興味深いのは、
この論文が、
「優れたリーダーの特徴」
ではなく、

shared leadership が、
どのような関係条件で発生しやすくなるのか

を扱っている点です。

論文では、

・shared purpose(共有された目的)
・social support(社会的支援)
・voice(発言できること)

などが、
重要な条件として挙げられています。

つまり、
shared leadership は、
制度変更だけで始まるものではなく、

人が関わり、
応答し、
違いを出せる関係の中で、
少しずつ立ち上がっていくものとして捉えられているのです。

「支配しない」だけでは、共有は始まらないのかもしれません

組織では、
トップダウン型のマネジメントへの反省から、

「もっとフラットに」
「もっと自律的に」
「自由に発言できる組織へ」

と語られることがあります。

もちろん、
それ自体は重要です。

ただ、
「支配を弱めること」と、
「共有が生まれること」は、
同じではないのかもしれません。

たとえば、
誰も強く指示しない。

しかし、
違和感も出てこない。
本音も語られない。
誰も本当には関わらない。

そうした状態は、
一見すると“自由”に見えながら、
実際には、
shared leadership が発生しにくい関係なのかもしれません。

shared leadership に必要なのは、
単に「支配がないこと」ではなく、

voice が残れること。

つまり、
違う意見や、
整理されていない感覚が、
やり取りの中で扱われ続けることなのかもしれません。

「voice」が消えるとき

以前の記事
「沈黙する組織で、シェアド・リーダーシップは生まれるのか」
でも触れたように、
人は最初から沈黙しているわけではありません。

最初は、
違和感を持っています。

「少し気になる」
「別の見方もあるのではないか」
「本当にこれでいいのだろうか」

そうした感覚を、
言葉にしようとすることもあります。

けれど、
反応されない。
軽く流される。
違和感が扱われない。

その積み重ねによって、
少しずつ voice が失われていく。

すると、
リーダーシップは、
再び一部の人へ集中していきます。

shared leadership が生まれないのは、
「能力が足りないから」ではなく、

voice が残れない関係になっているからなのかもしれません。

「分かち合い」は、関係の中で生まれる

この論文を読んでいると、
shared leadership は、
単なる役割分散ではないように感じます。

重要なのは、
人が違いを出せること。
応答されること。
支援されている感覚を持てること。

Emotional Compassでは、
こうした関わり方に、
「傾聴力」

「関係志向性」
といった特性も関係しているように感じます。

相手をすぐに否定せず、
関わり続けようとすること。

その積み重ねの中で、
少しずつ
「共有」が形成されていく。

シェアド・リーダーシップは、
最初から存在しているものではなく、

人と人とのやり取りの中で、
少しずつ発生していくものなのかもしれません。

そして、
「支配」を弱めることだけではなく、

voice が残れる関係をつくれるかどうかが、
「分かち合い」の条件になっているのかもしれません。

元記事

Carson, J. B., Tesluk, P. E., & Marrone, J. A. (2007). Shared leadership in teams: An investigation of antecedent conditions and performance. Academy of Management Journal, 50(5), 1217-1234.

https://ecampusontario.pressbooks.pub/app/uploads/sites/3344/2024/01/Leadership-in-team_antecedent-condtions.pdf

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