恒例イベントは、なぜ逆効果になるのか?一体感と境界の構造|INNERSHIFT

執筆:最上 雄太

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なぜ、盛り上げるはずの場で疲れるのか

キックオフミーティング。
オフサイト。
表彰式。
ホリデーパーティー。

チームの恒例イベントは、本来、一体感を高めるために設計されています。
場が温まり、笑いが生まれ、つながりが強まる。

それでも、こうした場のあとに、
どこか疲労感だけが残ることがあります。

なぜでしょうか。

問題は、イベントそのものなのでしょうか。
それとも、別の構造が働いているのでしょうか。


「みんな楽しんでいるのか?」という研究

ジュンヒョク・イム(Junhyok Yim)らは、
Journal of Management(2025)に掲載された

「Is Everyone Having a Good Time? The Effects of Complex Organizational Rituals on Employee Engagement and Behavior」

という研究で、複雑な組織慣習(complex organizational rituals)が従業員に与える影響を検証しました。

対象となったのは、

など、組織が意図的に設計した恒例イベントです。

結果は明確でした。

イベントを主にポジティブに経験した従業員は、

一方で、

イベントを主にネガティブに経験した従業員には、
これらの効果は見られませんでした。


体験の「非対称効果」

ここで重要なのは、

イベントが「効果的かどうか」ではありません。

効果があるのは、

ポジティブ体験が成立した場合のみ
という点です。

ネガティブな体験が混ざると、
期待された効果は現れない。

これを、

体験の非対称効果

と呼んでみます。

つまり、
一体感の設計は、
プラスを足せば足すほど効果が高まるという単純な話ではない。

むしろ、

わずかなネガティブが、
全体の意味を失わせる可能性があるのです。


設計された一体感という構造

研究で扱われているのは、
complex organizational rituals。

ここではこれを、

設計された一体感

と翻訳してみます。

恒例イベントは、自然発生的なつながりではありません。
組織が意図を持って設計し、時間と資源を投じて作る場です。

しかし、その場に参加する人々は、

ながら、その空間に入ります。

もしそこで、

が生じたとすれば、

その体験は「一体感」ではなく、
静かな距離を生むことになります。


境界の問題としての恒例イベント

Emotional Compassの24特性の一つ、
境界保持力 は、

他者の期待や圧力に流されすぎず、自分の価値観や判断軸を保ち続ける力

と定義されています。

恒例イベントの難しさは、
まさに境界の問題です。

設計された一体感が強くなるほど、
個人の境界は見えにくくなります。

一体感は、
境界が尊重されているときにのみ機能します。


一体感は、設計できるのか

研究が示しているのは、

恒例イベントが無意味だということではありません。

むしろ、

体験がポジティブであれば、
明確な効果があるということ。

しかし同時に、

ネガティブが生まれれば、
投資は回収されない。

一体感は、
演出だけでは成立しません。

それは、

ときにのみ、意味を持ちます。

恒例イベントは、なぜ逆効果になるのか。

それは、
一体感を強めようとするほど、
境界が見えなくなるからかもしれません。


参考文献


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